研究課題/領域番号 |
25670588
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
馬場 秀夫 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (20240905)
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研究分担者 |
馬場 祥史 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 講師 (20599708)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗癌剤感受性関連遺伝子 / 癌関連遺伝子 / ERCC1 / DPD / LINE-1 |
研究概要 |
L-OHPを含む治療を受けた症例に対するIRISの有効性を示す分子生物学的なメカニズムを解明することを目的として、熊本大学で切除された大腸癌肝転移症例を用いて、肝切除前に治療がない症例およびL-OHPを含む治療が施行された症例におけるmolecular profileを網羅的に比較・解析した。まず、パラフィン包埋切片からmRNAを抽出し、抗癌剤感受性関連遺伝子、癌関連遺伝子(ERCC1、DPD)のmRNA発現量の評価が可能かを検証した。予備実験としてまず30例において検証したが、全症例においてERCC1及びDPD mRNAが測定可能であった。次に、ERCC1, DPDのタンパクレベルでの発現量を評価するために、ERCC1, DPD抗体を用いた免疫染色の条件設定を行った。免疫染色によるERCC1及びDPD染色強度は、ERCC1, DPD mRNA発現量は有意に相関することが示され、それぞれの解析法の妥当性が示された。また、ゲノム全体のメチル化レベルのsurrogate markerとしてLINE-1メチル化レベルの検証も行った。パラフィン包埋切片からDNAを抽出し、bisulfite処理を行いbisulfite DNAを作成した。Pyrosequencing technologyを用いてLINE-1メチル化レベルを評価したところ、再現性をもって測定できることを確認した。このように、それぞれの測定法の妥当性が示されたことより、今後は大量サンプルでの検討に移行する予定である。L-OHPを含む治療を受けた症例に対するIRISの有効性を示す分子生物学的なメカニズムの解明は、本治療における対象患者選別のマーカーの同定に繋がることが期待され、その分子異常自体が分子標的治療のターゲットになることも考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子変化を評価する方法論が確立されたことにより、今後は大量サンプルでの検証が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、ERCC1,DPD mRNA測定法、ERCC1, DPD免疫染色法、bisulfite処理→pyrosequencing法によるLINE-1メチル化レベル評価法が確立され、その妥当性が示されている。多くのサンプル数を用いて、これらの測定を行っていく予定である。また、L-OHPを含む治療を受けた症例に対するIRISの有効性を示すメカニズムに関与すると考えられる分子に関して、In vitro実験系にて評価する。大腸癌細胞株におけるその分子の発現レベルもしくはメチル化レベルを評価し、L-OHP投与によりそのレベルが変化するかを検討する。また、その分子の発現レベルによって、細胞浸潤能(invasion assay)、増殖能(proliferation assay)、抗アポトーシス作用(flow cytometory)、抗癌剤感受性(L-OHP、5-FUなど)に差があるかを検討する。研究代表者らは、これらのassayについて熟知しており、それを行なう設備も学内に整備されている。これまで通り、研究代表者(馬場秀夫)を中心にしてprojectを進めていくが、“Molecular Epidemiological Pathology”の世界的リーダーであるDana-Farber Cancer InsituteのDr. Shuji Oginoとも適宜連絡をとり、必要に応じてsuggestionを受けていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品について、比較的安価で購入、及び医局内保管のものを使用できたため。 今回、分子変化を評価する方法論が確立されたことにより、今後は大量サンプルでの検証が可能となったため、検証に使用する消耗品購入に充てる予定である。また、検証によって得られたデータの保管・管理、研究関係書類の整理を行ってもらうための人件費に充てたいと考える。
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