研究実績の概要 |
3次元多能性幹細胞由来心筋組織体の薬剤応答性および毒性を評価するための要素技術として、大量の細胞を短時間で簡便かつ低侵襲に分取する方法について検討した。細胞接着分子インテグリンとそのリガンドであるラミニンサブタイプ(511, 221, 211)を用い、結合特異性、親和性を利用して多能性幹細胞由来心筋細胞の分取および未分化細胞の除去を試みた。未分化細胞マーカーとしてレクチンBC2LCNを用いフローサイトメトリーにおいて、ラミニン511の非付着細胞分画で未分化細胞率の低下を認めた。また、心筋細胞マーカー心筋型TnT発現をフローサイトメトリーで評価したところ、ラミニン221および211の付着細胞で心筋細胞率の上昇を認めた。本法では簡便・短時間、かつ低侵襲に心筋細胞純度を上昇させることが可能であった。 次に薬剤応答性を評価した。ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用い、Nishiguchiらの方法( Adv Mater., 2011)で3次元組織体を作製し、播種細胞数に応じた組織厚の増加、心筋構造タンパクおよび細胞外マトリックスタンパクの発現を認めた。組織体全体に同期拍動を認め、電気的接合を有する事が示唆された。心筋細胞に対する薬効が明らかな薬剤を用いて3次元組織体の応答を評価した。3次元組織体にDoxorubicinを添加し、24時間培養後、Doxorubicin濃度依存的な細胞障害活性の上昇・生存率の低下傾向を示した。一方、HERG Kチャンネル阻害剤E-4031添加により、100nM以上で有意な拍動数の減少、ピーク間隔増加およびField Potential Durationの延長傾向を認めた。また、β刺激剤Isoproterenol添加培養で、拍動数増加およびピーク間隔の減少傾向を示した。上記より、作製した3次元組織体においても既報通りの薬剤応答が評価できたと考えている。
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