大動脈瘤に対し近年実用化されたステントグラフト治療は、低侵襲治療として普及しつつあるが、残存する大動脈瘤が再発し破裂する危険性があり、早急に解決すべき課題である。申請者らは、体内留置後のステントグラフトに薬剤封入ナノ担体を自在に充填し、徐放される薬剤によって大動脈瘤壁を根治治癒する革新的ハイブリッド治療システムを発案した。本研究では、申請者らが独自に考案したハイブリッド治療システムのプロトタイプを完成させ、大動脈瘤モデル動物における有用性を実証することによって、実用化への橋渡しを目指す。そのため、本研究期間に、以下の2つの計画を実施した。 【計画1.治療システムのプロトタイプ開発】ビオチン化した生体適合性ポリマーでポリエステル製人工血管を被覆し、ビオチン標識グラフトを作成した。ニュートラビジン結合バイオナノカプセルと薬剤封入リポソームを融合し、標的認識能を有する薬剤封入ナノ担体を作成した。ビオチン標識グラフトをマウス血管内に留置し、蛍光標識ニュートラビジン結合ナノ担体を静脈注射し、ナノ担体が生体血管内に留置されたグラフトに結合しうることを確認した。 【計画2. マウスにおける大動脈瘤治療効果の検証】高濃度塩化カルシウム刺激によるマウス大動脈瘤モデルを確立した。カルシウム刺激処置時にビオチン標識グラフトを大動脈近傍の下大静脈内に留置し、大動脈瘤形成後に本システムによる治療を開始した。瘤治療効果として瘤径、組織構築のほか、現在炎症・細胞外マトリクス分子を解析中である。
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