研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、皮下などの体内を組織構築の場(バイオリアクター)にして自己組織からなる移植片を作製する新しい生体内組織形成術(In body tissue architecture technology)を応用し、全人工心臓(Total Artificial Heart: 以下、TAH)用バイオバルブの開発を目的としている。本年度はTAH用血液ポンプに組み込めるかを確かめる目的でバイオバルブの試作を行い、予備的に機能評価を行った。(1)3DCADにてバイオバルブ作製用基材の設計を行い、3Dプリンタを用いて円柱型アクリル基材を作製した。この基材と同様に3DCADで設計した王冠状のステンレス製リングとを組み合わせた鋳型を成ヤギの皮下に埋込した。約一カ月後に摘出し、アクリル基材を除去することでステンレス製リング内部に結合組織からなるバイオバルブ(内径20 mm)が一体化した試作品が作製できた。(2)得られた試作品を大動脈弁位に接続して、拍動流模擬循環回路を用いた機能評価試験を行った。作動流体は37℃の生理食塩水を用いた。体循環系の圧力負荷に対するバイオバルブの弁機能に関して予備的な検討を行うと、拍動数70-120 bpm、平均大動脈圧約100 mm Hgにおける拍出量は4.8-5.9 L/minとなり、平均逆流率は約11 %であった。バイオバルブは試作段階ではあったが、TAH用として適用可能であることが示唆され、今後の改良によって十分な弁機能が得られると期待された。
2: おおむね順調に進展している
TAH用バイオバルブの鋳型の設計・製作を基に、成ヤギへの埋め込みによるバイオバルブの試作が実行できた。また、拍動流模擬循環回路にてバイオバルブの生体外弁機能評価を実施できた。
本年度の結果を有効活用し、バイオバルブの鋳型の設計を見直し、大型動物への埋め込みによるバイオバルブの改良を行うと共に、拍動流模擬循環回路を用いた生体外評価を実施する。評価結果は適宜バイオバルブの改良にフィードバックさせて完成度を高める。並行して、バイオバルブを組み込むためのTAH用血液ポンプの作製を行う予定である。
実験補助やデータ処理等のために人件費を計上したが使用しなかった。また、基材を作製するための3Dプリンタの消耗品費を計上したが、消耗品を使い切ることがなかったため、次年度購入することとした。バイオバルブ作製のための鋳型、バイオバルブを組み込むためのTAH用血液ポンプ等を作製するための材料・部品の購入費や試作加工費として使用する。また、本研究の成果を国内外に広く発表する目的での学会参加出張旅費として使用する。
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