本研究では、皮下などの体内を組織構築の場(バイオリアクター)にして自己組織からなる移植片を作製する新しい生体内組織形成術(In body tissue architecture technology)を応用し、全人工心臓用バイオバルブの開発を目的としている。本年度は昨年度試作した導管付バイオバルブの生体外機能評価を行った。更に、導管付バイオバルブの基材を基に改良を行い、血液ポンプ用バイオバルブを作製した。 (1)ステント付バイオバルブと比較し、より耐久性の向上が期待可能な完全に自己組織のみからなる導管付バイオバルブの生体外機能評価を行った。導管付バイオバルブ(内径20mm)を肺動脈弁位に接続して、拍動流模擬循環回路を用いた機能評価試験を行った。作動流体は37℃の生理食塩水を用いた。肺循環系の圧力負荷に対するバイオバルブの弁機能に関して検討を行った結果、導管付バイオバルブの逆流率は約5%であった。ステント付バイオバルブの逆流率は約6%であり、同等の性能が得られることが確認された。 (2)バイオバルブを血液ポンプに組み込むことを考慮し、導管付バイオバルブを基に、完全に自己組織のみからなる血液ポンプ用バイオバルブの試作を開始した。3D CADにて血液ポンプ用バイオバルブ基材の設計を行い、3Dプリンタを用いてアクリル製の鋳型を作製し成ヤギの皮下に埋込した。約二カ月後に摘出し、アクリル基材を除去することで完全に自己組織のみからなる血液ポンプ用バイオバルブの試作品を作製した。
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