研究課題
脳死ドナー不足のため、本邦では生体肺移植の占める役割が大きいが、血液型不適合やドナー特異的抗体(DSA)陽性により実現できないことも多い。従って、腎臓や肝臓移植にならい、血液型不適合やDSA陽性症例での生体肺移植の実現を目指した研究が急務である。近年、肺移植後のDSAや抗体関連拒絶が世界的に注目され始めたが、治療法を含め確立した概念がない。こういった状況の中、本研究は、肺移植後のDSA産生や抗体関連拒絶の頻度、治療につき、多角的に検討することを目的として考案された。実際には、京都大学で2015年3月末までに行われた、肺移植112例(生体58例、脳死54例)について、術前後にHLA抗体を定期的に、また必要時に測定し、臨床経過と比較検討を行った。術前後のHLA抗体のデータが揃っている症例は、78例(生体43例、脳死35例)であった。術後に、新しくDSAが出現した(de novo DSA)症例を9例(11%)に認め、生体3例(7%)、脳死6例(17%)であり、脳死肺移植に多い傾向であった。特筆すべきは、生体肺移植では、全例で、術後10か月以降に、初めてde novo DSAが検出されているのに対し、脳死肺移植では、全て術後3か月以内に検出されていた。また、生体肺移植では、全例でclass II抗体が検出されていたが、脳死肺移植では、全例でclass Iが検出されていた。また、脳死肺移植の6例中4例で、de novo DSAは一過性であった。このように、これまでの解析結果から、de novo DSAの頻度、出現時期、検出期間、そのタイプについて、生体肺移植と脳死肺移植に違いがあることが判明した。今後のさらなる検討で、肺移植における抗体の意義を確認するとともに、血液型不適合やDSA陽性肺移植の臨床実施への足がかりとしたい。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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