研究課題/領域番号 |
25670612
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
寳金 清博 北海道大学, 大学病院, 教授 (90229146)
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研究分担者 |
中山 若樹 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40421961)
数又 研 北海道大学, 大学病院, 講師 (60634144)
鐙谷 武雄 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80270726)
七戸 秀夫 北海道大学, 大学病院, 助教 (80374479)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳微小血管 / 細胞老化 / SIRT1 |
研究概要 |
ウシBMEC(Cell applications社)を使用し、継代回数を20継代以上までに増やし、細胞老化について以下の検討を行った。 (1)形態の評価・・・10継代を超えると老化細胞の特徴的な所見と言われている巨細胞が出現し始め、20継代以上では5~10%の頻度で認めた。巨細胞は扁平化しており、核は不整形、巨大化、複数化していた。 (2)β-galactosidase活性による細胞老化の評価・・・20継代以上細胞では、巨細胞のほとんどにおいてX-Galの青色の染色を示した。巨細胞ではない正常サイズ細胞では、細胞が密に存在する部分で陽性になる傾向にあった。巨細胞と正常サイズ細胞との染色のパターンには違いがあり、巨細胞では核内部が染色されるのに対して、正常サイズ細胞では細胞質が染色された。 (3)DHEによる活性酸素産生の評価・・・Dihydroethidium(DHE)の蛍光発光で活性酸素を検出した。20継代の細胞では活性酸素の産生量が多くなっていた。特に前述の巨細胞において蛍光発光が強かった。前述のβ-galactosidase活性の評価で巨細胞と正常サイズ細胞との染色のパターンには違いがあったが、DHEの発光パターンも両者で違いがあり、巨細胞では核で発光するのに対して、正常サイズ細胞では核の他に細胞質の部分も発光した。 (4)SIRT1の発現の検討・・・SIRT1 rabbit polyclonal抗体を用いた蛋白発現の検討を蛍光免疫染色とウエスタンブロッティングで行っている。現在、反応条件の調整している段階であるが、条件設定が容易ではなく、いまだ十分な結果が得られていない。また、mRNA発現の検討でRT-PCRの実験も併せて行っている。現在、初期実験の段階であるが、生成されたPCR産物のサイズが予定とする大きさを示しており、今後、半定量実験が出来る状況となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)形態の評価、(2)β-galactosidase活性による細胞老化の評価、(3)DHEによる活性酸素産生の評価の3項目については、巨細胞の出現に注目して評価することにより、比較的容易に老化細胞の特徴を認識することが出来た。今後は定量的な評価が出来るようにするための工夫が必要と考えている。一方、(4)SIRT1の発現の検討については、現在使っているSIRT1 rabbit polyclonal抗体での蛍光免疫染色とウエスタンブロッティングの条件設定が今のところ容易ではなく、少し時間がかかっている状況である。このため、今後、抗体の買い替えも視野に入れる必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今までの検討で20継代以上細胞では核を中心とする形態異常、活性酸素産生、β-galactosidase活性増強があることが分かった。今後、定量的な検討を行い、初期継代細胞と比較して数値的な有意差があるのか検討する。また、この変化と前述のSIRT-1の発現(蛋白およびmRNAレベル)との関連を検討し、SIRT-1発現の低下がこれらの細胞老化の誘導に関わる可能性について検討する。また、アポトーシスの出現、NFκBの活性化、NAD/NADHの定量などについても老化細胞でどのように変化しているか検討する。 次いで、治療戦略につながる検討として、SIRT-1の活性化物質であるレスベラトロールもしくはSRT1720等の投与を行い、上記の老化細胞でみられる変化が抑制されるのか、検討する。また、逆にSIRT-1インヒビターであるSirtinol、EX-527等を初期継代細胞に投与することでSIRT-1の機能を人為的に抑えることで細胞老化の現象を早めることができるのかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
PCR Thermal Cycler Dice Gradientの購入金額が当初見込んでいた金額より安くなったため。 RT-PCRの実験に使用。
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