研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究は、髄液の産生と吸収のアンバランスによって生じる水頭症の発症原因にReceptor for advanced glycation end products(以下RAGE)が関与するか否かを探求することを目的としている。特に加齢によってRAGEの発現が増すことから、高齢者特有の疾患である正常圧水頭症(Normal Pressure Hydrocephalus 以下NPH)の発症メカニズムを解明する手掛かりになるものと期待される。現在のところ内因性分泌型RAGE (以下esRAGE)遺伝子導入マウスにおいて水頭症を発生する個体が生じることが明らかとなっているが、その浸透率、およびesRAGE発現レベルと水頭症発生の相関について調査中である。またNPHおよび後天的水頭症症例から得られた脳脊髄液中のRAGE発現を調べるために、協力研究者らが開発したELISAキットを用いた測定を行っている。血中RAGEはこのキットで測定可能であったものの、髄液中のRAGEを測定することはできなかった。キットにおける測定感度の問題と思われるため、今後は別の測定法を検討することとなる。また、脳室内出血後水頭症の機序についても研究を行っており、人工髄液を還流液として用いることで止血面で有用であるというデータが得られた。さらに臨床面で、後天的にNPHを発症した症例について水頭症発生以前の画像とデータが得られたため、発症機序について検討し論文として発表した。その他、脳腫瘍における細胞内シグナル伝達における論考等につき共著として論文を発表した。
3: やや遅れている
動物実験においては、水頭症の発症時期が特定できておらず効率の良い診断方法を探る必要がある。また、臨床検体におけるRAGE測定において、ヒト髄液でのRAGE発現量が血液に比較してかなり低くキットによる測定が感度以下であった。そのため測定方法を変更する必要に迫られている。
臨床検体のRAGEの発現に関しては、Western blottingによる測定を検討している。また、動物モデルについては、殺処分によって水頭症の診断を行っているが、生後何週後に水頭症が出現するかを見極める必要があるため、動物に使用できるMRIを用いた診断、ならびによろめく、体重が減少するなどの症状を主体とする診断の方が効率はよいと思われる。
既存の試薬、実験機器、施設の使用が可能であったことから未使用額が生じた。今後Western blottingや免疫染色などに使用するための抗体、試薬を購入予定である。また、外部記憶装置等の実験補助装置の購入も検討している。
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