研究課題/領域番号 |
25670625
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
宇賀 美奈子 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (40624789)
|
研究分担者 |
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380)
渡辺 英寿 自治医科大学, 医学部, 教授 (50150272)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 光トポグラフィー / ミニブタ / 脳機能 / 一般線形モデル解析 |
研究概要 |
近赤外光を用いて大脳皮質の表面から直接脳血流変化を計測するダイレクト光トポグラフィーの計測装置は既存の装置をもとに一部改良したパーツを適用する方法で開発した。高密度の計測を行うために細径ファイバーを用いたプローブを使用し、大脳皮質表面から計測するためにプローブ先端と脳表面の接触を補助するパーツを作成した。セボフルランによる吸入麻酔下のミニブタ3頭に対し感覚野付近の開頭手術を行い、鼻先の皮膚を電気刺激して刺激時の脳血流の変化をダイレクト光トポグラフィーで計測し、データ解析を実施した。ダイレクト光トポグラフィーの計測結果の検証のため、同時に皮質脳波誘発電位の計測も行った。 従来の光トポグラフィーは覚醒状態のヒトで行われることが多かったが、本実験では麻酔の影響下にある動物を使用しているため、従来の解析方法では麻酔の影響による脳血流変化を適切に反映できない可能性があり、データ解析方法に改良が必要であると考えられた。fMRI(磁気共鳴機能画像)で用いられている一般線形モデルを用いた回帰分析による解析方法を基に、光トポグラフィーに最適化するよう改良した解析方法が開発中であったため、この解析方法を導入して解析を実施した。その結果、ダイレクト光トポグラフィーで計測した脳活動の活動部位が、皮質脳波誘発電位で計測した活動部位と同等の位置で確認できた。これにより、本手法が脳活動の計測に有効であることを示すことができた。解析方法の検証を行ったうえで、ダイレクト光トポグラフィーの計測技術と計測結果を論文に取りまとめた。 一方ダイレクト光トポグラフィーの計測用パーツについては、現在までに実施した計測状況に基づき問題点や改良すべき点を抽出した。改良方針を踏まえて、取り回しが容易で安全性にも配慮した新しいパーツの開発作業を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はまず計測で得られたデータを精査した。3頭のミニブタで異なる刺激部位に対する脳の活動部位の変化を計測することができ、計測した活動部位が過去に報告されている脳機能地図や同時に計測した皮質脳波誘発電位による脳機能の分布と同様の結果を示ししていることが分かった。これにより、我々の開発した計測方法を用いて脳表面から直接光トポグラフィーが計測可能であると示すことができた。大型実験動物による実験であるため、3頭の個体から有意な結果が得られていることで十分実験結果の有効性を示すことができていると考えられる。また、従来用いられている光トポグラフィーと異なり、麻酔下の動物が計測対象であることから、データの解析方法についても改良を試みた。 これらの結果と実験の状況を踏まえ、安定して計測が行えるように計測パーツの改良に取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの計測と解析で確認された問題点・改良点を反映した改良型の計測パーツを開発し、動物を用いた計測に使用した結果を再度検証する。改良型のパーツを用いることで、計測の効率化と安全性の向上がなされているかを検討し必要であれば再度改良を行う。これらの検証の過程で収集したデータを基に、大脳皮質表面から計測する光トポグラフィーの再現性を示す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は自作した光トポグラフィーの計測用のパーツを使用して計測を実施した。実験動物の使用頭数削減の原則に基づき、他の研究で使用した実験動物で同時に計測したデータを使用したが、本研究に十分適用可能であることが検証できたため、その結果の解析を実施した。そのため、当初予定していた動物実験関連支出が抑制された。実験結果をもとに、改良した計測用パーツの開発を行っているが、年度内に仕様が確定していなかったため開発費用が発生しなかった。 計測用パーツの開発を実施しており、次年度に一旦完成予定であるためその開発経費に使用する。さらに、改良したパーツを用いて性能および特性の検証実験を実施する必要があるが、開発完了時期の繰り越しに伴い延期されている実験の実施費用や動物購入費に充填する。
|