研究課題/領域番号 |
25670626
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
山口 文雄 日本医科大学, 医学部, 准教授 (70267219)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | sonochemical therapy / ultrasound / aminolevulinic acid / protoporphyrin IX / glioma |
研究概要 |
悪性脳腫瘍特に悪性神経膠腫に対する音響化学療法についての研究を継続してきた。これまでの実験でマウス皮下に移植したヒト悪性神経膠腫に対する超音波照射により腫瘍体積の縮小または消失を達成できている(Yamaguchi F., et al. Low Frequency Ultrasonication Induced Antitumor Effect in 5-Aminolevulinic Acid Treated Malignant Glioma. Journal of Cancer Therapy, 2013, 4, 170-175)。本実験では超音波周波数を25kHzと脳腫瘍手術に用いられる超音波吸引装置と同じ周波数を用いた。しかし、比較的低周波である25kHzでは増感剤としてのアミノレブリン酸なしでも、その強度を上げることによって組織破壊が起こることがあり、治療可能超音波強度の範囲が狭い。増感剤による代謝産物であるプロトポルフィリンIXの発現がない正常組織への影響が懸念されるため、超音波の周波数をより高いものにする必要性を示唆した。また、音響化学療法における超音波の作用機序について温熱効果によるものという報告もあるため、増感剤と温熱によるhyperthermotherapyの実験も開始した。これにより、アミノレブリン酸に暴露した悪性神経膠腫樹立細胞に対する温熱の効果があることがわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性神経膠腫を移植したマウスでの実験でヒト悪性神経膠腫に対する超音波照射により腫瘍体積の縮小または消失を達成できており(Yamaguchi F., et al. Low Frequency Ultrasonication Induced Antitumor Effect in 5-Aminolevulinic Acid Treated Malignant Glioma. Journal of Cancer Therapy, 2013, 4, 170-175)、これはin vivoでの音響化学療法の効果を示す結果としてほぼ予定通りの成果が得られた。 超音波照射による発熱の効果を検討し、増感剤としてのアミノレブリン酸と温熱療法の相乗効果についての検討も行い、一定の効果があることを見出しており、これについても進展がみられている。
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今後の研究の推進方策 |
超音波の周波数を25kHzよりも高い1MHzと3MHzについて実験を行う。まずは、in vitroにてその効果を確認する。アミノレブリン酸の投与時間、超音波の強度、照射時間について各種条件での実験を行う。そして、時間間隔をおいた照射の繰り返しによる増強効果についても検討し、担癌動物モデルでの治療実験の条件設定の基礎データとする。動物実験では皮下腫瘍モデルでの実験に引き続き脳内移植モデルでの実験を行うが、マウスなどの小動物の脳に適合するプローブの大きさが必要であり、現在用いているものでは大きすぎる。そのためより小さなプローブの作製が必要である。小さなサイズのプローブを作ることで、臨床応用の際に狭い腫瘍摘出腔での使用に有効であると考えられる。超音波照射による発熱が音響化学療法の作用機序の一つとして考えられるため、増感剤であるアミノレブリン酸を投与した担癌マウスにおいての温熱療法実験も予定している。また、その際に腫瘍細胞内でのミトコンドリア機能の変化やFGFをはじめとした各種成長因子の挙動についてもリアルタイムPCRや免疫染色にて評価する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた実験の進行が遅れ、試薬の調達を予定より遅くしたため。 平成25年度に予定していた実験を26年度に入り順次進めており当初の予定に沿った予算使用ができる計画である。
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