研究課題/領域番号 |
25670629
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川口 浩 東京大学, 医学部附属病院, 届出診療医 (40282660)
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研究分担者 |
田中 健之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00583121)
澤田 良子 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (30648308)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | autophagy / chondrocyte / hypoxia |
研究概要 |
ヒト変形性関節症の関節軟骨においてオートファジー(自食作用)の低下が報告されるなど、変形性関節症に関係する新たな要因としてオートファジーが注目され始めている。本研究は、関節軟骨におけるオートファジーの機能と役割を広く検証し、さらにその上流シグナルを探索することによって変形性関節症の新たな治療法に繋がる知見を得ることを目的とする。軟骨細胞におけるオートファジーの過程を観察すべく、GFP-LC3融合タンパクを発現するオートファジーマーカーを軟骨由来細胞株およびマウス初代培養軟骨細胞に導入し、顕微鏡下に低酸素および飢餓ストレスを加え観察したところ、軟骨細胞においても他の既知の細胞と同様のオートファゴソーム形成から分解まで一連の流れを有することを確認できた。低酸素ストレスおよび飢餓ストレスを与えた際のオートファジー関連因子のmRNAおよびタンパクの動きをin vitroで観察した。関節軟骨の挙動を司る重要な因子と考えられている低酸素状態によるストレスにおいて、既知のオートファジー関連因子であるLC3, ATG5, BECLIN1が上昇する中で、飢餓ストレスと比較した時にULK1が顕著な反応を示し、HIF1aなどの低酸素で活性化される因子を上流に持つ可能性が示唆された。そしてULK1の抑制因子として知られるmTORを薬剤性に阻害した系では、オートファジーが活性化し、なおかつMMP13など変形性関節症を進行させる遺伝子群への抑制効果が見られた。これらより低酸素状態とmTOR阻害の組み合わせによる軟骨細胞におけるオートファジー制御の一端が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オートファジーのシグナル構造は複雑かつ多岐におよぶため、軟骨細胞において特にターゲットとすべき因子を絞る作業に難渋している。そのため、本来in vitroと並行して進める予定であったin vivoの実験において、ターゲットとするトランスジェニックマウスの選定が進まない、もしくはターゲット候補となる因子のトランスジェニックマウス、ノックアウトマウスが存在せず自作を余儀なくされるため、その準備が滞っている。一方、in vitroでの軟骨細胞における低酸素状態に特異的なオートファジー関連因子の動向が把握できつつあり、徐々にオートファジーのメカニズムが明らかになっている。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoの一部は計画通り、オートファジーを軟骨特異的に阻害するノックアウトマウスを作製して関節軟骨におけるオートファジーの作用を解析する。さらにLMDを用いた微小発現解析とパスウェイ解析によってオートファジーに関係する遺伝子発現の変化を捉え、その制御シグナルを探索するとともに、低酸素条件下でオートファジー活性やこれらの制御シグナルがどのように制御されるかをマウスで検証する。in vitroではレーザーマイクロダイセクションを用いた微小発現解析を進め、オートファゴソームの形成やオートファジーマーカーの発現レベル・部位に最も変化がみられるフェーズの前後の凍結切片から微小サンプル回収を行い、mRNAを抽出・増幅してマイクロアレイ解析を行う。得られたデータから変動の強い遺伝子群を選び、パスウェイ解析を行って、オートファジー制御機構に関わる候補シグナルをピックアップする。選別した候補シグナルについて、そのシグナルを増強もしくは減弱しうるような化合物や遺伝子の発現ベクター、siRNAなどを作成し、GFP-LC3トランスジェニックマウスから単離した初代培養軟骨細胞を用いた様々なin vitroモデルに応用して、軟骨分化とオートファジーに与える影響を検証して責任シグナルを絞り込んでいく。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画がおおむね順調に進んだため、次年度以降の研究経費とした。 ノックアウトマウスを用いた関節軟骨におけるオートファジーの作用の解析にかかる経費。レーザーマイクロダイセクションを用いた微小発現解析にかかる費用など。
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