研究課題/領域番号 |
25670631
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹下 克志 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30262009)
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研究分担者 |
門野 夕峰 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70401065)
武冨 修治 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70570018)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 軟骨 |
研究概要 |
関節軟骨の酸素濃度を調べるためプローブの選定と条件検討から開始した。低酸素プローブを数種類マウスに腹腔内投与し関節軟骨がIVISでうまく描出されるか試みたところ体表から撮影することは困難であった。血流が乏しいことが要因と考え、関節内注射を行うと投与後4時間以上で関節軟骨の低酸素域が蛍光発色することが分かった。IVISを用いたin vivo imagingを試したが、発色は確認できるものの解像度が悪く関節面の詳細な検討は困難であった。そこで関節内の凍結切片を作製し、関節軟骨の低酸素領域を検討した。矢状面で切片を作製すると荷重部に酸素濃度が低い部分が確認された。 続いて酸素濃度を定量するためにスタンダードの作製を行った。関節軟骨を野生型マウスから採取しガラス底プレートに平面培養した。メディウムに低酸素プローブを添加し、4時間後よりカバーガラスをガラス底プレートに被せると低酸素環境が作製された。カバーガラスでおおわれた中心部は低酸素領域となり、蛍光発色が確認された。そこでさまざまな酸素濃度での発光強度を調べるため低酸素インキュベーターを用いて低酸素プローブ入りの培地で平面培養を行った。細胞数などの条件により差が生じることがわかったため、現在条件検討を重ねスタンダード作製をおこなっている。同時にex vivoでも同様の検討を行っており、膝関節の器官培養も同時に行っている。 また軟骨細胞における低酸素の影響をみるために関節軟骨を低酸素環境下で培養し、mRNAを回収し軟骨マーカーをリアルタイムPCRで調べたところ、anabolicなCol2a1, Sox9などの遺伝子が増加していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画書の通りに実験を行い、一定の成果が得られている。低酸素領域の描出が再現性高く行えるように条件検討を重ねている。スタンダード作製も一部難渋しているが、酸素濃度による変化を捉えらることが可能となってきた。マウス変形性関節症モデルを用いた実験も行っているが、プローブを投与するタイミングを含め条件検討がまだ必要である。 in vitroでは低酸素で変動するシグナルを同定するため低酸素誘導因子(HIF)を中心にみているが、Col2a1やSox9などのanabolic factorの変動がみられている。これらのサンプルをマイクロアレーに提出し、網羅的解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoではマウス変形性関節症モデルにおける関節軟骨の低酸素領域を同定し、変性に伴う関節軟骨の酸素濃度変化を引き続き検討する。変性に伴い酸素濃度変化が見られた場合、部位別にLaser micro dissectionで検体を採取し遺伝子発現解析を行う予定である。そのために、微小サンプルからの遺伝子増幅法を確立する必要がある。また上記に示したマイクロアレーの結果と照合し、酸素濃度による遺伝子発現を網羅的に解析する。これらの結果より酸素濃度の変化に伴い変動する遺伝子を同定し、in vivo, in vitroで機能解析する予定である。特に低酸素誘導因子HIFを中心としたシグナルの下流にある遺伝子を探索することで軟骨における酸素濃度の影響を詳細に検討できる可能性がある。具体的には関節軟骨における発現を免疫組織学的に検討し、変形性関節症での発現変化をタンパクレベルでとらえること、またsiRNAなどを用いてノックダウンすることで変性マーカーの変動を検討し変形性関節症への関与、また治療ターゲットとなりうるかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
in vivo の実験を中心に行っていたため、試薬の使用量が予想よりも少なかったことにより繰越金が生じた。また予定していたマイクロアレー解析用のサンプル採取が行えなかったため、来年度にこの予算を計上する。 本年度はマイクロアレーの提出、またリアルタイムPCRを多用するため、サイバーグリーンなどの高額試薬を多量に使用する。
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