初年度に得た結果をもとにin vivoで関節軟骨の酸素濃度変化に注目し実験を行った。我々が発案した実験的マウス変形性関節症モデルを用いて、変形性関節症の進行に伴う酸素濃度変化を低酸素プローブを用いて調べた。すると変性の進行に伴い、酸素濃度が上昇することが分かった。そこで低酸素のマスター転写因子であるHIF-1αの発現を免疫組織染色で調べると発現の低下が見られた。そこで低酸素環境で起こる遺伝子発現の変化を見るためにマウスの関節軟骨細胞を低酸素環境で培養し、一部はIL1β刺激を加え、それぞれをマイクロアレーで比較した。すると低酸素環境ではMmp13やMmp9などのcatabolic factorとともにアポトーシス関連遺伝子が抑制されることがわかった。これらの結果に対するHIF-1αの関与を調べるため、siRNAを用いて実験を行った。するとHIF-1αが抑制されることでcatabolic factorの発現が著明に上昇し、HIF-1αがこれをを抑制していることが示唆された。さらにリアルタイムRT-PCRでHIF-2αの発現を見ると、HIF-1αを抑制することでHIF-2αは上昇し、catabolic factorsの誘導に重要な役割を担っていることが示された。 またLMDを行い、関節軟骨の様々な部位での発現プロファイルを調査しようとしたが、結果にばらつきが大きく網羅的解析までは至らなかった。
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