本研究課題は、骨細胞におけるRANKL逆シグナルの生理的な役割の解明を目的として、特に骨形成抑制作用を有するSOST分子の発現制御への関与を想定した。前年度までの検討から、RANKL逆シグナルの入力活性を有するscFv三量体の作成と、また骨細胞の形質を保持可能な3次元培養系の構築が完了していた。 H26年度では、マウスにscFv三量体を投与することで、生体においてRANKL逆シグナルがどのような機能を持つのかを検証した。数日間の反復投与後、血清を取得してELISAによる各分子の濃度を測定した結果、scFv投与によりSOST、sRANKL濃度の上昇、OPG濃度の低下が確認された。骨芽細胞に対する作用は否定出来ないが、この結果から、骨細胞へのRANKL逆シグナルの入力によって骨吸収の促進と骨形成の抑制が誘導されていると考えられた。生理的には、骨細胞と破骨前駆細胞の接触が起点となってRANKL逆シグナルが発生すると考えられ、破骨細胞の活性化とともに近隣での効率的な骨吸収が行われていることが示唆された。 骨細胞を単離したin vitroでの解析でも同様の作用は確認された。さらに、骨細胞と破骨前駆細胞の共培養系において、骨細胞を予めscFV三量体に曝露することで骨吸収活性の増大が認められ、効率的なRANKL分子の提示においてもRANKL逆シグナルの関与が認められた。 現在、シグナル分子の活性化プロファイルを網羅的に検出可能なリン酸化プロテオミクスの測定系を構築中であり、これを用いて骨細胞内のシグナル活性化の詳細な解析を行う予定である。
|