研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、細胞系譜特異的に発現するCre マウスとしてT 細胞や滑膜線維芽細胞に加えて軟骨細胞特異的Cre(それぞれLck-Cre, Col-6-Cre,Col2-Cre)マウスを用いてCre-loxP システムを利用して細胞系譜特異的RANKL 欠損マウスの作製を行った。関節炎における関節部位の骨破壊の評価のため、どのラインのマウスにおいても同等に最大の関節炎を引き起こすことが可能なコラーゲン抗体誘導性関節炎(Collagen-antibodies-induced arthritis:CAIA)を用い、マイクロCT の手法により骨破壊のレベルを評価するとともに、組織化学染色の手法を用いて破骨細胞の数、破骨細胞による骨破壊の面積を算出した。その結果、軟骨細胞やT細胞特異的にRANKLを欠損させたマウスでは関節炎の炎症環境下においてコントロールと同程度の骨破壊と破骨細胞の増加が認められた。一方で滑膜線維芽細胞特異的にRANKLを欠損させたマウスでは、関節炎の環境下コントロールと比較して骨破壊のみならず破骨細胞の増加も有意に抑制されていることを見出した。このことから、滑膜線維芽細胞がこの関節炎モデルにおける主要な破骨細胞誘導細胞であることが明らかとなった。これらの研究成果は、関節リウマチの骨破壊における滑膜線維芽細胞の病的役割の重要性を支持するものであり、滑膜線維芽細胞の治療標的としての有用性を示すものである。
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