研究課題
挑戦的萌芽研究
私は力学的刺激と骨代謝機構の関係を検討するなかで、骨代謝におけるイオンチャネル・神経伝達物質受容体の重要性を発見して、膜電位が骨代謝を制御するという示唆を得た。そこで、力学的刺激に反応する骨内での代表的細胞である骨細胞に焦点を当てて、光操作による生体内での骨構築を見据えながら、膜電位操作回路による骨細胞の機能制御を試みている。本年度では、骨細胞において膜電位操作回路を導入して骨細胞において機能するかどうかを検討した。骨細胞の細胞株MLO-Y4を用いて実験をおこなった。膜電位操作回路を遺伝子導入して、光照射による膜電位操作をおこなったところ、光操作による膜電位変動が確認された。電気生理学手法(ホールセルパッチクランプ)を用いて検討したところ、青色光照射により膜電位の脱分極が生じ、黄色光照射により膜電位の過分極が生じたことを確認した。また、骨細胞における膜電位の意義として、膜電位変動による機能変化を検討したところ、MLO-Y4の特徴的な形態(樹状突起形成・細胞間接着)の変動が確認された。今後は、生化学的・遺伝学的手法により、骨細胞の機能変化を同定していくとともに、引き続き形態変化の観察を続ける。生体内での骨構築については、頭頂骨由来の骨芽細胞に膜電位操作回路を導入した細胞を作製して、別のマウスの頭頂骨欠損部に操作回路を導入した細胞を移植した。対照マウスと実験マウスに光照射をおこない、骨構築の具合を確認したところ、対照マウスに比べて実験群のマウスで光照射による骨芽細胞機能操作をきっかけとして骨修復が促進されたのを確認した。
2: おおむね順調に進展している
骨細胞における膜電位の意義について検討をすすめているが、光活性化型分子を骨細胞の細胞株(MLO-Y4)に導入して、研究を進めている。光活性化型分子を導入したMLO-Y4細胞を用いて、光照射によって、膜電位が変動することを確認した。現在、光誘導膜電位操作による細胞機能操作についての検討をすすめている。また、光照射による生体内の骨構築については、頭頂骨欠損部に操作回路を導入した細胞を移植して、光照射による骨構築を確認している。
骨細胞の機能操作については、基礎データを収集していく。具体的には、光照射による膜電位操作により、骨細胞機能・形態(ALP産生、細胞間接着、樹状構造形成)がどのように変化するかを検討していく。生体内骨構築については、予備実験でおこなっている方法を用いて、頭頂骨に光照射をおこない、骨構築がどのように進行するかをあわせて検討していく。
2014年4月より、大阪歯科大学に異動のため、本研究計画にある、培養実験を2014年1月前後から停止したために、次年度使用額が生じた。具体的には、3-4ヶ月の継続培養実験をおこなうために、場所・環境等が変わることにより、実験条件・結果が変わることを避けるためであった。一時的に停止した培養実験を再開して、前年度に計画していた通り、消耗品費(試薬・培養器具・実験動物)にあてる予定である。特に、停止していた培養計画を順調に推進するために、培養器具・試薬を中心に費用を使用して、その後、実験動物を用いた計画に移行する。
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