研究課題/領域番号 |
25670641
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
加藤 博之 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (40204490)
|
研究分担者 |
内山 茂晴 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (10242679)
山田 充彦 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10263237)
樋口 京一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20173156)
中田 勉 信州大学, 学術研究院医学系, 講師 (70452141)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | サルコペニア / 加齢 / L型カルシウムチャネル |
研究実績の概要 |
本研究では筋のL型Ca2+チャネルの異常とサルコペニアの発症機序の関係について検討を行っている。昨年度までに,早老モデルであるSAMP1マウスを用い,in vivoでの筋力測定を行う実験方法について検討を行ってきた。 本年度はまず,4ヶ月齢と14ヶ月齢のSAMP1マウスの前脛骨筋を測定した。その結果,筋の断面積は加齢によって有意に減少していたが,張力への有意な影響は認められなかった。また,SAMP1マウスの各筋肉組織をHE染色し鏡検した結果,高い頻度で白血球の浸潤が認められた。これらの組織の遺伝子等を解析した場合,炎症由来の変化を捉えてしまう可能性が高いことから,以降の検討はC57BL/6マウスを用いることとした。 5ヶ月齢および28ヶ月齢のC57BL/6マウス由来の前脛骨筋を用いて検討を行った。その結果,筋の断面積には加齢による変化は認められなかったが,電気刺激によるspecific forceは有意に減少していた。次に,長趾伸筋でも同様の検討を行った結果,加齢による筋断面積の減少と筋力の低下が観察された。 次に骨格筋の収縮およびカルシウム代謝に関わる代表的な分子について,ウェスタンブロッティングによる解析を行った。5,10,および28ヶ月齢のC57BL/6マウスから長趾伸筋を摘出した後,ミクロソーム画分を抽出し,ウェスタンブロッティングを行った。その結果,LTCCのCaV1.1サブユニットの発現量が,加齢によって有意に減少していた。一方,LTCCのβ1サブユニットは加齢による増加が認められた。また統計的な有意差は観察されなかったが,RyR受容体の発現量も減少傾向が見られた。ジャンクトフィリン1の発現量には変化が認められなかった。今後,CaV1.1サブユニットの発現量の低下メカニズムについて検討を行う必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に用いるマウスの系統を変更したものの,in vivoでの筋力測定,CaV1.1サブユニットの定量については一定の成果が得られた。また異所性発現系における骨格筋L型Ca2+チャネルの解析を予定していたが,これについては継続して測定条件の検討を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
老化マウスを用いた検討でCaV1.1サブユニットの発現量低下を確認できたので,今後,このメカニズムと,筋力低下への寄与がどの程度なのかについて明らかにしていく。プロテアソームの阻害剤などを用い,関連分子を共に定量することで,CaV1.1の発現量の調節メカニズムを明らかにする。さらにCaイメージングなどの実験により,CaV1.1の減少が,興奮収縮連関にどのような影響を与えているか検討を行う。 また,2015年にコロラド大のグループがstac3と呼ばれる骨格筋型L型Ca2+チャネルのアクセサリーサブユニットを同定している。Stac3を用いることで異所性発現系による骨格筋L型Ca2+チャネルの解析が行える可能性が高いと考えられるので,これについても解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況により,購入を見送った試薬があるため,次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額はH27年度の試薬購入費に加え,分子生物学用試薬,電気生理学用試薬などの購入に充てる。
|