研究課題/領域番号 |
25670645
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西井 孝 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (70304061)
|
研究分担者 |
田中 壽 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (40294087)
中田 研 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00283747)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | MRI / 膝関節 / リアルタイムイメージング / モーション |
研究実績の概要 |
関節の多様な病態評価にむけて、静止状態の関節形態・組成に関する画像評価だけでなく、動的状態の関節を良好な画質精度でリアルタイムにイメージングできるシステムや撮像法(膝モーションイメージング)の開発を推進した。リアルタイムイメージングにはreal-time MRI法(高速撮影用シークエンスにより撮像時間を短縮化する)とcine-PC MRI法(数周期撮影後各位相時画像を集積し屈伸連続イメージを作成)があり後者には正確に膝を周期的屈伸するMRI対応デバイスが必要である。我々は任意の周期・スピードで約0-80度の膝関節の屈伸運動の往復をくりかえす自動制御ができるMRI対応膝周期的屈伸デバイスを考案・作成した。 本年度研究では(1)豚膝を用いてリアルタイムイメージングの有用性についての基礎的検証をおこない、従来の異なる膝屈曲角度での静止画撮影による半月板変化評価とは異なる生体内の関節動作にともなう半月板動態が示された。(2)ボランティア例でのリアルタイムイメージングにおける2つの撮影法の比較をおこなった。 cine-PC MRI法よりreal-time MRI法の方が、半月板や関節軟骨間の組織間コントラストが高く画質も良好であった。(3)健常ボランティアでの半月板動態調査をおこない、膝屈伸運動における静止画撮影法に比較しreal-time MRを用いたリアルタイムイメージングで自動運動(自分で膝を動かす)中の半月板は内側で屈曲位30-60度の範囲でより大きな半月板傾斜角の変化が示された。以上より、生体内の関節動作にともなう半月板動態評価にはリアルタイムイメージングが有用であり、自動膝運動下のreal-time MR法撮像が最も半月板動態変化検出の精度が高いことが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目標は、1)画質精度の良好な3テスラ クローズボア型 MRI機器で、撮影中に膝関節を正確に任意の一定周期で屈伸制御がおこなえるデバイスを開発する。2)超高速撮影に適するTrueFISP系撮像法(real-time MRI)とbalancedシーケンス(cine-PC MRI)の2つの撮像シークエンスの撮影条件の最適化をおこなう。3)健常ボランティアおよび膝靭帯・半月板損傷患者で周期的屈伸デバイスを用いたreal-time MRI・cine-PC MRIによりリアルタイムモーションイメージングの臨床試験を実施し、正常―患者症例間の病態比較や患者手術治療後の再MRI評価による潤滑動態の改善効果評価における有効性を検討することである。本年までの研究により、1)の屈伸制御がおこなえるデバイスを開発・検証が完了し、2)の撮像法の最適化は、自動膝運動下のreal-time MR法撮像と判定された。次年度に3)の臨床研究を推進することで、本研究課題の目標がすべて達成できると想定される。
|
今後の研究の推進方策 |
1) 膝モーションイメージングによる膝半月板障害の検出能に関する基礎的実験:リアルタイムイメージング評価が膝半月板の動態評価が可能なレベルに到達したが、半月板の病理学的変化(断裂や変性)がモーションイメージングにどのように反映されるのかを基礎的実験で解明することは臨床研究を推進する上で重要である。ブタ膝関節での異なる形態・部位(前方・外側・後方部)の断裂半月板を作成し、膝モーションイメージングでどのような動態変化が評価されるかを検討する。 2)膝モーションイメージングの症例研究 各障害膝と正常膝間の関節動態比較および疼痛発生・時期と膝可動中の半月板の形態変化・変位量との関連性について検討する臨床研究を開始する。対象は、半月板損傷または前十字靱帯(ACL)損傷を有する膝関節障害例20例とする。まず研究開始に先立ち、大学倫理審査委員会での研究承認を得て、研究の性格、具体的な研究方法、研究において予想される危険性と利益などを被験者に説明し同意を得る。3テスラ高磁場MRIと膝周期的屈伸デバイスを用い、内側・外側の大腿/脛骨関節中央矢状面でreal-time MRIとcine-PC MRI撮影および通常の関節形態・組成評価撮影(T1/T2強調像および高解像度FIESTA-C像)をおこなう。臨床症状では膝関節内由来の疼痛出現の有無とその関節角度を評価する。各周期運動中の間で大腿骨と脛骨間の相対的変位量と関節間距離、半月板の形態変化と変位量を計測し、各障害膝と正常膝間の関節動態比較および疼痛発生・時期と膝可動中の半月板の形態変化・変位量との関連性について検討する。膝関節障害例は、関節鏡手術にて関節軟骨損傷評価を行うともに、半月板修復術やACL再建術などの治療をおこなう。治療後6か月時に、再度モーションイメージングを行い、外科的治療による生理的動態の安定化効果を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
おおむね研究計画は順調に推移しそれに伴い予定経費も使用されたが、本年のデバイス必要経費を調整した結果、33,321円のみ残存した。
|
次年度使用額の使用計画 |
来年もひきつづき、デバイス調整経費などが必要なため、本年の残金を充足する。
|