骨が機械刺激を受容して骨形成を行うメカニズムを明らかにするために、全身の骨組織に存在する骨細胞ネットワークが機械刺激受容機構としてカルシウムシグナルや膜電位シグナルのような電気的なシグナルを利用しているか否か検討を行った。そのために2光子励起顕微鏡や第2次高調波等の最新の蛍光イメージングで骨の中を直接観察するとともに、機械刺激を加えた時の骨細胞ネットワーク内のカルシウムや膜電位シグナル伝達の時空間的解析を行った。 具体的方法としては、まず、骨への機械刺激を加える装置の作製を九州大学の藏田耕作博士との打ち合わせのもと、行った。この際、顕微鏡下での刺激と観察が両立できるよう小型化したものを設計、作成した。次にこの装置を用いて、実際に脛骨へ繰り返し圧縮刺激を加えた。骨形成の評価はカルセイン2重ラベル法にて行ったが、従来とは異なり、カルセインラベル間の距離を2光子励起顕微鏡を用いた観察により、動物が生きたままで行うことが可能であることが分かった。骨イメージング法の確立に関しては、上記機械刺激装置へ脛骨を挟み込むことによって、体動に起因するノイズが減らせ、ほぼ同一視野を繰り返し観察することに成功した。次に、骨細胞の細胞内カルシウム濃度イメージングを行う目的で、まずは色素性のカルシウムプローブの検討を行った。赤色の色素であるRhod2はシグナルノイズ比がよく、骨細胞への取り込みが良好であったが、ダイナミックレンジが小さく、微小変化をとらえるのには不向きであると考えた。最終的には、Fluo8とFuraRedのratioイメージングを行うのがもっともダイナミックレンジが高い方法であることが分かった。最終的には機械刺激装置で、繰り返し圧迫刺激を加えながら、マウスがいきたままリアルタイムにカルシウムイメージングを行うことに成功した。
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