研究課題
挑戦的萌芽研究
研究は、霊長類化椎間板髄核組織を保有するキメラマウスを樹立し、椎間板変性モデル作出に供し、変性で発生するイベントを検証し、霊長類化椎間板の有用性を明確にすることである。実験動物モデルの研究において霊長類と齧歯類の椎間板髄核の性状に大きな相違が存在する問題があるため、霊長類化椎間板を持つ実験動物の樹立を考えた。霊長類ES細胞や人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立技術の誕生と胚発生技術を融合させることによる霊長類化臓器を持つキメラマウスの誕生が理論的に可能となったため、この先駆的技術を椎間板変性研究に応用することが特徴である。本研究目的である霊長類化臓器を持つキメラマウスを作出するため、先行してSd変異マウスの原因遺伝子であるPtf1a遺伝子の変異マウス(Semba K.PLoS Genet.9:e1003204.2013.)の受精卵に対して本大学で樹立されたチンパンジーiPS細胞をマイクロインジェクション法で投与して子宮内移植をおこない後期胚を採取した。その胚サンプルに対してマウス胚発生に移植霊長類細胞が貢献しているか検討した。しかし、現時点で臓器特異的欠損をきたす変異マウスの受精卵に対して霊長類細胞を移植しても発生期間において移植霊長類細胞の生着と臓器発生への貢献を認めることが出来なかった。現在、全脊椎で椎間板髄核を完全に欠損するSd変異マウス、椎間板髄核細胞のモニタリングマウスであるSktGtマウス、椎間板線維輪細胞のモニタリングマウスであるPax1-lacZマウスを準備完了している。また、マーモセットES細胞の入手と霊長類ES細胞、霊長類iPS細胞のナイーブ化によってマウスの受精卵に対して霊長類多能性幹細胞が移植後に生着し臓器発生への貢献をするための方法を模索している。
3: やや遅れている
本研究は、霊長類化椎間板髄核組織を持つキメラマウスの作製と椎間板変性実験への応用を主な目的とする。方法は、霊長類人工多能性幹細胞(iPS細胞)を樹立し、椎間板髄核細胞を完全に欠損するSd ES細胞とアグリゲーション法によってキメラマウスの作製を行う。そして、適性にキメラマウス内で椎間板髄核が霊長類由来細胞で構築されているか確認を行う。上記のため、平成25年度の実験を行った。まず、Sd変異マウスの原因遺伝子であるPtf1a遺伝子の変異マウス(Semba K.PLoS Genet.9:e1003204.2013.)の受精卵に対して本大学で樹立されたチンパンジーiPS細胞をマイクロインジェクション法で投与して子宮内移植をおこない後期胚を採取したが、臓器特異的欠損をきたす変異マウス内で移植霊長類細胞の生着と臓器発生への貢献を認めることが出来なかった。この原因として、①ホストの変異マウス受精卵の状態が悪い(未分化を維持できていない等)、②マイクロインジェクション法で投与した霊長類iPS細胞の状態が悪い(未分化を維持できていない等)、③マイクロインジェクション法の手技が適正でない、上記を考えたが、①移植された変異マウス受精卵は後期胚まで発生可能であり、同時に行ったキメラマウスは予想通り適正に作出が来ている、②チンパンジーiPS細胞は樹立者チームで多能性が維持できていることが確認されている、③同時にマイクロインジェクション法により作出したキメラマウスは適正に出生したことより、全ての実験操作は適正に行われたと考えられる。そのため、「臓器特異的欠損をきたす変異マウスの受精卵に対して霊長類細胞を移植しても発生期間において移植霊長類細胞の生着と臓器発生への貢献を認めることが出来なかった」理由として、「霊長類ES細胞/iPS細胞がナイーブ化していない」ことが原因であると推測した。
本研究では、霊長類化椎間板髄核保有キメラマウスを作出することにした。使用する動物種がマウスである理由は、その解析技術・手技・遺伝子情報が充実しており汎用性が高く、申請者の専門分野であるというだけでなく、現在、本研究に理想的な環境とサンプルを有しているので選択した。本研究の霊長類化椎間板髄核組織を持つマウスの解析が成功すれば、ヒトにおける椎間板を、胚発生から器官形成、完成、維持、変性を一連の病理現象として解析し理解する事が出来ると考えている。しかしながら、我々が樹立した特異的臓器欠損をきたすPtf1a遺伝子変異マウス(Semba K.PLoS Genet.9:e1003204.2013.)の受精卵内にチンパンジーiPS細胞をマイクロインジェクション法で投与して子宮内移植をおこない後期胚を採取したが、変異マウス胚は得られたが、既にこの変異マウスの表現型で認めていた特異的臓器欠損は遺残しており、霊長類細胞を移植しても発生期間において移植霊長類細胞の生着と臓器発生への貢献を認めることが出来なかった。現在、これを克服するための対策が必要となっている。その方針として、①霊長類ES細胞、霊長類iPS細胞のナイーブ化操作を行い再度移植実験、②チンパンジーiPS細胞だけでなくその他の霊長類の万能/多能生幹細胞を入手/移植実験に使用、③移植ホストである変異マウスの受精卵の条件を変更、上記を考えている。そこで、①霊長類ES細胞のナイーブ化方法を施行、②マーモセットES細胞を樹立した実験動物中央研究所・応用発生学研究センター・センター長・佐々木えりか先生とその樹立されたマーモセットES細胞が寄託されている理化学研究所・バイオリソースセンター(BRC)に既に連絡、マーモセットES細胞の提供承諾済であり、③変異マウスの受精卵への移植の際に、移植時期の検討、補助細胞を同時移植の検討を行う。
58,891円残額があることを失念し、既に全額使用済みと考え最終確認をしていなかったため。平成25年度予算の残額58,891円は、平成26年度に細胞培養用の消耗品購入細胞培養用に使用する予定とした。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (2件)
PLoS Genet.
巻: e1003204 ページ: 1-17
doi: 10.1371/journal.pgen.1003204.
Human Genet. Embryol.
巻: 3 ページ: 1-7
doi: 10.4172/2161-0436.1000107
http://irda-genetics.kuma-u.jp/publication/p07.html
http://irda-genetics.kuma-u.jp/research/r06.html