研究課題
体内時計は、約24時間周期のリズムをもたらす機構のことであり、時計遺伝子によって構成される。体内時計は、中枢時計である視交叉上核のみならず全身の細胞に存在するといわれ、視交叉上核が全身の体内時計を制御していると考えられている。われわれは、この体内時計が軟骨に存在することを明らかにしてきた。近年、体内時計が変形性関節症と関連することが報告されている。また、温熱刺激で誘導されるHIF-1αは時計遺伝子の発現を誘導することが報告されている。これらのことを踏まえて、さまざまな物理刺激やホルモンによって軟骨の体内時計がどのように調節されるかを明らかにすることを目的とした。われわれは体内時計を可視化できるマウスを用いて、大腿骨の器官培養を行い、軟骨の体内時計を観察した。さまざまなストレス刺激や薬剤およびホルモンの投与を行い、体内時計の位相の変化を解析した。その結果、発光イメージング装置による観察で軟骨において強い発光が存在し、発光が概日リズムを刻むことを示した。さらに、副甲状腺ホルモンの投与で、軟骨の体内時計が濃度依存的および投与時刻依存的に変化することを明らかにした。さらに軟骨部においてPTH1型受容体が存在することを免疫組織化学法で確認した。これらのことから、軟骨部の体内時計は副甲状腺ホルモンによって制御される可能性を示している。また、概日リズムの破綻は軟骨の変性を増強させる可能性があることが報告されていることから、体内時計の制御を行える可能性を示したことは非常に重要な知見であると考える。さらに、成長軟骨板に体内時計が存在し、副甲状腺ホルモンで位相変位を示したことから、骨折治療へ応用できる可能性もあると考える。
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Acta Orthopaedica
巻: 13 ページ: 1-5
10.3109/17453674.2015.1029393