本研究では、関節リウマチにおける炎症に、最近同定されたpH感知性G蛋白質共役受容体特にGPR4がどのように関わっているかについて、受容体欠損マウスのコラーゲン関節リウマチモデルを用いて解析した。また、今後のプロトン受容体の創薬をめざし、GPR4に特異性をもつ低分子化合物の特徴についても解析した。 昨年の研究ではC57BL/6系統にCII/CFAエマルジョンのinjectionを行ったが、腫脹形成の程度が弱かったため、今年度はDBA1系統を用いて解析した。関節腫脹スコアの最高を4点とし、4本足の関節それぞれについて解析した(最高点は16点になる)。その結果、野生型マウスでは7日目あたりから腫脹が観察されはじめ、2から3週間後に1から2程度のスコアになり、6週間後にほぼピークのスコア6に達した。一方、GPR4ノックアウトマウスでは,腫脹は5日目から観察されはじめ,2から3週間後では3から4のスコアを示した。しかし、その後の腫脹の悪化は軽微であり、6週後のピークのスコアは野生型とほぼ同様であった。このように、GPR4ノックアウトマウスでは関節炎の発症が早い時期からおこっている可能性があり、今後、例数を増やすとともに、炎症開始の初期、後期の下肢をパラフィン包埋後、ヘマトキシリン・エオシン染色で炎症性細胞の浸潤、炎症の程度を比較する必要がある。 GPR4に特異性のある低分子化合物としてimidazopyridine化合物の特徴を調べた結果、この化合物がプロトン受容体の本来のリガンド結合部位(細胞外にあるヒスチジン残基)とは異なる部位に結合し、GPR4に対するプロトン作用を抑制するnegative allosteric modulatorとして作用していることが推定された。今後、GPR4の創薬研究を加速させてくれると期待される。
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