研究課題
挑戦的萌芽研究
骨軟部腫瘍を含む悪性腫瘍の転移は複雑な一連の過程を経て成立するが、最近の臨床病理学的な解析により、腫瘍細胞は非常に早期から血中にCTC(circulating tumor cells)として観察されること、転移の成立には転移先での腫瘍の増殖が最もcriticalで、骨髄由来の種々の細胞(macrophage, 血管前駆細胞等)が補助的な役割を演じていることなどが大きくクローズアップされてきている。しかしながら従来のCTCの研究は、血中のCTCを腫瘍細胞特異的なカラム等を用いてcaptureする方法で、生きた細胞と死んだ細胞の分離が困難な点、又得られたCTCが2-100 cells/mlと著しく少なく、生物学的な評価が非常に困難であるなどの欠点が多い。申請者らは、すでにCTCをLM8並びに親株のDunn OS移植C3Hマウス尾静脈より定量的に再現性良く分離培養する実験系を確立している。得られたCTCと原発巣、さらに肺転移巣より得られた培養細胞を用いて、GeneChipやマイクロアレイ、qRT-PCR等を用いて、anoikis, stemness, metastasis signatureに関連する遺伝子発現を網羅的に探索し、CTCの生死や浮遊状態における増殖に関与する遺伝子をpick upし、遺伝子導入によるoverexpressionやsiRNAによるknockdown等を用いてCTCの病態を分子生物学的に解析する。又、得られた結果の臨床へのfeedback目的で、骨軟部腫瘍arrayを用いて抗体等による臨床組織sampleの染色を行い、臨床病理学的な解析を行う。現在迄CTCがVEGFを大量に発現し、VEGFが内皮細胞を介した浸潤運動に重要である事、CTCは原発巣の細胞に比べ浮遊培養条件下でも細胞死(anoikis)を来さず、増殖可能である事を見いだしている。
3: やや遅れている
生きたままCTCを培養する事には成功しているが、CTCを培養する事による形質変化は無視できず、実際に流血中に存在するCTCの遺伝子発現を直接解析するには、sampleが少なすぎて非常に困難である。一方CTCは前述した様に循環血液中でも(即ち浮遊培養条件下でも)増殖できる事が明らかと成っており、現在浮遊培養条件下で細胞の塊り(Spheroid)が増殖できる過程を詳細に検討すれば、CTCの性質の一つが解明できると考えて実験を開始している。
Spheroid内での細胞増殖に及ぼす種々の因子の解析を実際に行うため、方法論の確立を行っている。1. Spheroid内部での細胞増殖の様子を観察するため、遠赤外線を用いた実体顕微鏡をニコン社と共同で開発しており、厚みのあるサンプルでも生きたままの形態観察を可能とする。2. 人工的に作成した風船内で細胞を3次元に培養できる技術を有する大阪大学基礎工学部の境Drと2013年12月より共同研究を開始し、現在使用している細胞がcapsule内で培養可能と成った。capsule内の種々の条件を変える事により、CTCが増殖できる条件を解析する。3. 種々の条件下での細胞の3次元増殖の可視下の研究方法の情報を得る為、2013年12月に行われた米国細胞生物学会(NewOrleans)に参加出席し、多くの研究者と意見交換を行った。
研究の達成度が少し遅れており、1年目は方法論開発のため、多くの研究者との共同研究の開始や、情報交換に多くの時間を費やし、実際の実験、研究の実施が遅れており消耗品等の予算を消化していない。2年目は、顕微鏡の導入や、3次元培養に技術も順調に整いつつ有り、多くの実験が出来ると考えられ、その為の消耗品(試薬や実験器具等)の購入のため、研究費を使用予定である。又得られた成果は、海外の学会(国際転移学会、ドイツ)等で発表を計画しており、その為に支出予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Cancer Letters
巻: 347 ページ: 114-122
10.1016/j.canlet.2014.01.027
http://www.mc.pref.osaka.jp/omc2/category/biology.html