研究課題
本研究は、バイオイメージングシステムを用いて生体内での髄液や血流、関節液といった液体の”流れ”を非侵襲的に可視化することを目的としている。これまでに我々は、発光酵素であるホタルluciferaseコンストラクトをレンチウイルスで移植細胞遺伝子に組み込み、移植後の細胞の移動や生存率を評価することに成功した。このコンストラクトとアルブミン発現ベクターを用いて、発光酵素と蛍光蛋白を付加した人工アルブミンの作成を試みた。しかし培養液中での発現蛋白量は微量であり、発光基質を加えてもバックグランウド程度の発光強度しか得られなかった。一方で、これまでのD-luciferinでは発光強度が弱く、生体内深部の可視化が困難であると考えられたため、従来型と比較して格段に発光強度が高いffLuc-cp156を組み込んだトランスジェニックマウスを入手した。このマウスは暗室中で目視にても個体発光が確認できるほど強度が高いため、汎用性が高いものと考えられる。本マウスの膝関節に発光基質を注入したところ、関節腔全体の発光が確認できた。しかし、細胞全体が発行酵素を分泌しているため、コントラストを調整しても流体の存在は確認できるものの、流れ自体は確認できなかった。本マウスの骨髄移植等を野生型マウスへ行い皮膚損傷や脊髄損傷を作成したところ、損傷部に浸潤した細胞群は同定可能であったが、細胞自体が発現する発光酵素に比較するとどうしても血清蛋白中のluciferase蛋白量が少ないため、細胞を除外した体液であれば短時間のイメージングは可能であるが、病態解析への応用には多くの課題が残存している。
3: やや遅れている
人工アルブミンの作成には至っていないため、タンパク質担体としての発光酵素は作成できていない。一方、ff-Lucトランスジェニックマウスを入手し、骨髄移植を行うことで抹消血が光るキメラマウスの作成には成功した。本マウスを用いて、血流や出血自体のイメージングは可能であった。シャーレ上での流体のイメージングも問題なかった。ただし、血液中に於いても細胞成分と血漿成分では発光酵素の含有量に差が大きく、流体というよりは細胞イメージングの域をでていないと考えられる。
関節液あるいは髄液単独でも発光は確認できているが、細胞と比較した際にはコントラストがつかないため、正常マウスへ細胞成分を除外した関節液あるいは髄液を注入し、イメージングを試みる。流体のイメージングは基質注入のみでは希釈されてしまうため、引き続き発光基質とアルブミンの人工タンパク質の作成を試みる。
次年度使用額は当初予算との差額である。
使用計画は特に予定していない。
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