研究概要 |
平成25年度はヒトiPS細胞由来の神経幹細胞培養系を用いた毒性評価系の確立をめざし、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞を14日間、培養し、ドパミン作動性ニューロンに分化させた細胞に対して、ケタミン(0、5、20,100,500,2000μM)を24時間作用させ、生細胞の割合、Caspase-3活性(アポトーシスの誘導)、ATP産生量、ミトコンドリア電位の変化、NADH/NADの割合の変化について検討した。実験系を構築する目的で、併せて、ヒト由来の不死化神経培養細胞ReNCell CXを用いて、同様の検討をした。ReNCell CXおよび、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞培養のいずれにおいても、100~500μM以上でATPの産生量が低下し始め、NADH/NADの割合が上昇した。また、Caspase-3の活性は500μMで上昇し、ミトコンドリア電位も500μMで低下が認められた。ある一定の濃度より高濃度のケタミンを作用させると、アポトーシスが誘導されることが確認された。 ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞については、コリン作動性ニューロンに分化させた細胞を用いた実験も試みたが、Caspase-3および、ATP産生量に関する検討では、ドパミン作動性ニューロンと反応に差がなかった。 これらの結果は、大まかな性質としては、過去にヒトES細胞由来の神経幹細胞で報告されたものと類似の反応ということができ、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞培養でも、ケタミンの毒性評価系を構築することができることが示された。
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