研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞培養系を用いた毒性評価系の確立をめざし、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞を培養し、ケタミン(0、5、20,100,500μM)を24時間作用させ、生細胞の割合、Caspase-3/7活性(アポトーシスの誘導)、ATP産生量、ミトコンドリア電位の変化、NADH/NAD+の割合の変化について検討した。実験系を構築する目的で、併せて、ヒト由来の不死化神経培養細胞(ReNCell CX)を用いて、同様の検討をした。ReNCell CXおよび、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞培養のいずれにおいても、100~500μM以上でATPの産生量が低下し始め、NADH/NAD+の割合が上昇した。また、Caspase-3/7の活性は500μMで上昇し、ミトコンドリア電位も500μMで低下が認められた。ある一定の濃度より高濃度のケタミンを作用させると、アポトーシスが誘導されることが確認された。ROSスカベンジャーであるTroloxを作用させるとアポトーシスが抑制されるため、アポトーシスまで反応が進むためにはROSの産生量が一定以上に達することが必要であることも示唆された。 これらの結果は、大まかな性質としては、過去にヒトES細胞由来の神経幹細胞で報告されたものと類似の反応ということができ、ヒトiPS細胞由来の神経幹細胞培養でも、ケタミンの毒性評価系を構築することができることが示された。
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