研究課題/領域番号 |
25670678
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高山 賢一 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50508075)
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研究分担者 |
浦野 友彦 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20334386)
井上 聡 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (40251251)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子腫瘍学 / 内分泌学 / 病態医化学 / ゲノム医科学 |
研究概要 |
平成25年度における当研究課題については計画に沿って次世代シークエンサーを用いた前立腺癌細胞株でのlong non-coding RNAの発現の解析を行った。まずAR陽性の前立腺癌細胞株LNCaP, VCaPおよびアンドロゲン枯渇状態で継代し樹立したホルモン療法耐性細胞株 LTAD, VCaP-LTADの4つの細胞株についてvehicle, DHTでの刺激(24 時間)、およびsiAR下でのvehicle, DHT刺激(24 時間)を行いシークエンスされた配列をゲノム中にマッピングしdirectional RNA-sequence を行った。AR依存的なアンドロゲン誘導を受ける転写産物、および耐性細胞株で発現上昇、発現減少を受けるような転写産物を同定した。それらのRNA-sequenceの結果をNONCODEやRefseqなどのデータベースに登録されている遺伝子群と比較することで目的となる遺伝子の同定を進めた。アンドロゲンで応答する遺伝子群のほとんどはsiARにより発現誘導や発現レベルの低下を認めた。一方アンドロゲン長期枯渇では発現上昇する遺伝子がある一方、発現減少をする遺伝子も多数同定された。ホルモン耐性細胞株ではARが高発現しているが、すべてのAR応答遺伝子が発現上昇するわけではなくARの標的が耐性細胞株で変化する報告と一致すると思われた。これらの基準に沿って耐性株で上昇するアンチセンスRNA群の網羅的な同定に成功した。またBicalutamide resistant (BicR)細胞でもRNA-sequenceを行ったデータを使用し平成25年に発表したアンチセンスRNAであるCTBP1-ASの耐性株での発現上昇、アンドロゲン誘導性を確認した。また加えて同様の動きを示すアンチセンスRNAも同定することができlong non-coding RNAのネットワークの解明が進んだものと考える。またいくつかのBicRで発現上昇するlong non-coding RNAの発現については定量的RT-PCR法を用いてそのアンドロゲン誘導性を確認した。これらの同定されたアンチセンスRNAは前立腺癌の治療標的として期待することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年にアンチセンスRNAの機能に関する論文発表が1件あり、次世代シークエンサーによる解析も予定通り進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方針としては耐性株で発現上昇を確認できたアンチセンスRNAを対象に機能解析を進める。まずセンス鎖に対する発現制御機構が存在するかどうかsiRNAを用いて解析する。そのためにセンス鎖の転写レベル、転写後、翻訳などの様々なレベルでの発現への影響を検証する。また発現制御機構の解明のためエピゲノミックな解析を検討する。またセンス側のタンパクコード遺伝子の機能の解析も必要である。タンパクコード遺伝子の作用機序をsiRNAやoverexpressionの技法を用いて解析する。一方で作用機序を同定するためにはその結合タンパクの同定も欠かせない。アンチセンスRNAのpull downタンパク複合体の解析を検討する。さらにRNA-FISHやChIRP-seqなどのクロマチンでの局在を同定することもゲノムワイドでのアンチセンスRNAの作用の解明として検討していく。またアンチセンスRNAの癌における治療標的となりうるかどうか動物実験を用いて検討する。過去の報告でホルモン治療耐性腫瘍のモデルを既に作成しており同様の実験モデルを利用することで解析することは可能である。新たなアンチセンスRNAの機能解析を進めるとともに治療抵抗性前立腺癌の治療標的となりうるCTBP1-ASの作用メカニズムについても詳細に解析する。HDACやPSFのChIP-seqやRIP-seqなどの解析を行いエピゲノミックなアンチセンスRNAのゲノムワイドでの作用を解析する。また臨床研究についても前立腺癌の臨床サンプルを用いてLaser capture microdissection (LCM)によるRNA採取、定量的RT-PCRまたはin situ hybridization (ISH)を用いて解析することは可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究開始当初に予定していた以上に、26年度に次世代シークエンスデータ解析のためのバイオインフォマティックス専門家に関する人件費が必要となったため、繰り越した。 次世代シークエンスデータ解析のためのバイオインフォマティックス専門家に関する人件費として約150万円使用する予定である。
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