研究課題/領域番号 |
25670688
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
上田 紗弥 (伊藤 紗弥) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90534511)
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研究分担者 |
三木 恒治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10243239)
上田 崇 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50601598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / アンドロゲン / ショウジョウバエ |
研究概要 |
本研究の目的はアンドロゲン非依存性前立腺癌の増悪を担う新規制御因子を単離・同定することである。 平成25年度の計画は、ショウジョウバエ個体を用いたスクリーニング系を構築し、前立腺癌増悪制御を担う候補因子の同定までを行う予定であった。進捗状況としては、ショウジョウバエ個体におけるスクリーニング系の構築を終え、いくつかの癌増悪制御候補因子の同定に至っており、当初の計画通り順調に研究進展している。当初の研究計画ではヒトPAX2のトランスジェニックショウジョウバエ系統を用い、前立腺様組織の過形成表現形を指標としたスクリーニングを行う予定であった。しかしながら、ヒトPAX2をショウジョウバエにおいて過剰発現させると致死に至ることが判明したため、前立腺様組織の細胞増殖・分化・遊走を指標としたスクリーニング系に計画変更しスクリーニングを遂行した。既に、いくつかの癌増悪制御の候補因子を同定するに至っており、現在、以降の解析を行う候補因子の絞り込みを行っている段階である。 今後、同定した因子のヒトホモログをヒトの培養細胞において機能評価する。PAX2の転写共役因子か否かを検討するとともに、癌増悪制御への関与を検証する。最終的には、マウスの前立腺癌モデルを用いたin vivo解析及びヒト前立腺癌患者での発現解析を行うことで、本申請で同定した新規因子を個体レベルで機能評価する。最終的に、PAX2の遺伝子発現制御機構の一端を明らかにし、アンドロゲン非依存性前立腺癌の増悪制御メカニズムの解明に展開できるものと期待する。 本申請に関する研究成果は、論文発表・学会発表等で広く研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画は、1)ショウジョウバエにおける前立腺癌モデル系の構築、2)ショウジョウバエ前立腺癌モデルを用いたPAX2転写共役因子の探索である。 1)に関しては、当初の計画ではヒトPAX2のトランスジェニックショウジョウバエを作出し、前立腺癌モデルとして用いる予定であった。しかしながら、ショウジョウバエ個体においてPAX2を強制発現させると致死に至ることが判明したため、PAX2トランスジェニック系統を用いたスクリーニングは困難と判断した。代替するスクリーニング系として、前立腺様組織の細胞が雌雄交配依存的に遊走する現象に着目し、ノックダウン系統ライブラリーを用いて細胞遊走現象を変動させる因子をスクリーニングする方法が可能であるか否かを検討した。その結果、PAX2のショウジョウバエホモログpairedのノックダウン遺伝子変異系統では前立腺様組織における細胞遊走現象が抑制されることが確認された。また、pairedのノックダウン系統では前立腺様組織の細胞分化抑制が認められた。そこで、細胞の増殖・分化・遊走に関してpairedのノックダウン遺伝子変異系統と類似あるいは反対の表現形を示す遺伝子変異系統をスクリーニングすることでPAX2の転写共役因子の探索が可能であると判断した。 2)に関しては、約30の遺伝子変異系統を用いて前立腺様組織の細胞増殖・分化・遊走現象を変動させる因子のスクリーニングを行い、いくつかの癌転移制御候補因子の同定を終えた。 以上、研究の進捗状況は研究計画通りに進展している。現在、候補因子のヒトホモログに関してヒト前立腺癌培養細胞を用いて機能評価している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、第一に、同定した癌増悪制御候補因子に関してヒト前立腺癌培養細胞を用いて機能評価する。具体的には、候補因子の細胞増殖能・細胞浸潤能などを解析し、癌増悪制御因子であるか否かを検証する。次に、候補因子がPAX2の遺伝子発現制御を担うか否かをレポーターアッセイにより検討し、 PAX2の転写共役因子であるか否かを確認する。また、候補因子を介したPAX2転写制御の分子メカニズムを明らかにする。具体的方法は、候補因子依存的なPAX2標的遺伝子のエピゲノム変動をChIP assayにより検討する。また、既知エピゲノム制御因子との相互作用を複合体精製や免疫沈降法により検討する。その他、候補因子のPAX2転写活性への寄与を種々の生化学的手法を用いて検証する。第二に、前立腺癌モデルマウスにおける候補因子の機能解析を行い、個体レベルで分子機能を評価する。具体的には、候補因子をノックダウンした前立腺癌培養細胞を皮下移植したxenograftモデルを用い、癌細胞の増殖や転移に対する候補因子の制御能を検討する。第三に、前立腺癌患者における候補因子の発現解析を行い、前立腺癌増悪に対する候補因子の寄与を検証する。 一連の解析により、新規PAX2転写共役因子を介した遺伝子発現制御機構を分子レベル解明し、アンドロゲン非依存性前立腺癌の増悪制御メカニズムの一端を明らかにすることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験の進捗状況や物品の価格の変更により、残額が生じた。必要な薬品・器具等で残額で購入できるものがなく、次年度経費に充当しての使用が有意義であるため。 平成26年度の研究計画は同定した候補因子に関して、1)ヒト培養細胞を用いた分子機能解析、2)マウス個体における癌増殖・転移能の検討、3)前立腺癌患者検体を用いた発現解析、を行う予定である。実験に必要な研究経費(消耗品)として、1)に関しては、invasion assay、 レポーターアッセイ、ChIP assay、免疫沈降等の生化学的解析に用いる各種試薬、抗体、細胞培養用培地・血清、ガラス・プラスチック器具が挙げられる。2)では主に実験動物飼料、系統維持費、3)ではPCR primer合成、各種酵素類、実験試薬に充足される。その他、研究成果の学会発表のための旅費・論文投稿のための経費、英文校閲謝礼に充当される。
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