男性不妊症診断法に関して、健常な精細管(直径300μm)が精子を含む可能性は非健常な精細管(直径150μm以下)のそれよりも高いため、周波数限界を超えてこの直径を計測する方法の研究を行った。これに関して以下の成果を得た。 (1)我々は太い線状物質から反射する超音波の周波数が細い線状物質のそれよりも低いことを見出した。この結果は、通常の超音波検査で行われるパルスエコーの波長限界を超えて線状物質の直径計測ができることを示唆している。この性質はナイロン糸を用いた結果であった。この性質の普遍性を明らかにするために糸状のソフトマター(ポリフッ化ビニルデン、ポリプロピレン)を用いて、これらの直径とその反射超音波の周波数特性を研究し、ナイロン、ポリフッ化ビニルデン、ポリプロピレンすべてにおいてその直径が周波数により計測できることを明らかにした。金属においては、同様の性質は成り立たないことも明らかにした。更にヒトの摘出された睾丸を使用して実験を行った。これに関しては現在解析中であるが、上記の結果を用いると周波数の高低で管の判定の可能性を見出した。(2)精子を含む精細管を判定するための画像化法を提案した。手法として、これまでに提案した線状物質の周波数特性およびファジィ論理を用いて、取得データ本来の解像度を保持したBモード画像を作製する。精細管の代わりとして二種類の直径の異なるナイロン糸を用いた結果、正確にナイロン糸の分布を示した。睾丸を模したファントムによる実験では、これにより直径の異なるナイロン糸のエコーを示すことに成功した。更にフーリエ変換ではなく、ウエブレット変換を用いて、更に抽出精度を向上させる手法を開発した。精細管の代わりとして二種類の直径の異なるナイロン糸を用いた結果、良好な結果を得た。
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