研究課題
挑戦的萌芽研究
不妊症の原因の約半数は、精子数の減少あるいは精子の受精能の低下など男性不妊症である。その頻度は、糖尿病・肥満症などメタボリックな病態によって増加している。男性不妊症の治療として体外受精や顕微授精などの生殖補助技術が施行されているが、身体的・経済的負担は大きく、かつ、それぞれの治療周期に期待できる挙児の確立は約20%と必ずしも高くない。したがって、男性不妊症の詳細な分子機構と新たな治療法の確立が求められている。十二指腸など上部消化管に発現するK細胞から分泌される消化管ホルモンGIPは、膵β細胞からのインスリン分泌を促進するのみならず、脂肪細胞や骨芽細胞において栄養素の蓄積に作用する。本研究は、GIPによる精子機能の調節に関する挑戦的萌芽研究であり、平成25年度は、GIP受容体が精巣の精母細胞~精子細胞(精細管周期表VI~VII)に発現していることを示すとともに、GIP受容体欠損マウスの精子と野生型マウスの卵子を用いた対外授精における受精率が低く、透明体を除去しても改善が認められないことから、GIP受容体欠損マウスの精子は、卵子との膜融合、またはそれ以降の過程に問題が生じていることを明らかにした。また、マイクロアレイからGIP受容体欠損マウス精巣で特異的に発現が低下していることがわかった因子Xについて、高脂肪食あるいは過食で肥満・インスリン抵抗性を示すマウスにおいてもその発現が顕著に低下していることを明らかにした。今後、この因子Xが精子と卵子の膜融合にどのように関連しているか研究を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
GIP受容体欠損マウスの精子と野生型マウスの受精能が低下していることを示し、これに関連する因子をおおむね同定した。平成26年度において、その因子の分子機構を解明する予定であり、全体としておおむね順調に進展していると評価している。
平成25年度に同定した因子について、精子卵子融合に関わる分子機構を解明する。今後、この因子の発現を増加させる方策を模索する予定である。
体外授精を行うことでGIP受容体欠損マウスと野生型マウスの精子の受精能の評価をすることができ、顕微授精が不要となった。因子Xを精製した体外受精の検討を平成26年度に実施する予定。GIP受容体欠損の精子で特異的に発現が減少している因子Xについて、遺伝子組換えの方法で蛋白を大量に調整する。この蛋白を用いて、GIP受容体欠損マウスの精子と野生型マウスの卵子の体外受精を行い、受精能が改善するかどうかを検討する。
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