研究課題
挑戦的萌芽研究
最近、PCOS患者の不妊治療にメトホルミン(糖尿病治療薬)が用いられている。メトホルミンは、排卵率を改善させるが、妊娠率の向上には必ずしも結びついてはいない。われわれは、これまでの研究からメトホルミンの子宮内膜増生抑制作用、着床関連シグナルを低下作用が妊娠率を低下させていると推定している。そこで、25年度はまず増殖抑制に注目してシグナル経路を明らかにし、メトホルミン投与時の着床率の改善方法を探るための研究を行った。子宮内膜初代培養細胞の確保は困難であったため、子宮内膜癌細胞株(Ishikawa, HEC)を用いて検討を行うこととした。メトホルミンの添加により、MPAK-cyclin D-RbおよびmTOR-S6Kシグナルが用量依存性に抑制され、細胞増殖速度が低下した。後者のシグナル抑制にはメトホルミンのAMPKの活性化作用が関わっていると推定された。次に、血清(2%)のDNA合成促進活性を放射性チミジン摂取率により測定し、メトホルミン服用により血清中のDNA合成刺激活性が減少することを明らかにした。メトホルミン服用により、血清中の液性因子が変化し、その結果子宮内膜上皮の増殖が低下している可能性が示された。種々の検討の結果、この作用にはインスリン以外の因子(IGF-1など)が関与している可能性が示された。以上の検討から、メトホルミンの子宮内膜増殖抑制作用には、直接作用と間接作用(内分泌作用)とがあることが明らかとなった。In vivoでのメトホルミンの作用を確認するため、糖尿病管理目的でメトホルミン服用中に子宮摘出を受けた患者標本を入手して検討を進めている。この過程で、婦人科疾患で摘出された子宮標本を子細に観察したところ、ダグラス窩腹膜に高率に子宮内膜類似組織が存在していることを発見した。この組織をメトホルミン作用の評価に使える可能性があることから、併せて検討を進めている。
3: やや遅れている
子宮内膜組織の入手が、糖尿病合併でメトホルミン服用している患者で子宮摘出術を受けた患者にほぼ限られているため、十分量の検体が得られにくいため研究がやや遅れている。
不妊症患者からの内膜検体だけでなく、子宮癌などの婦人科疾患で子宮摘出を受けた患者からの検体も対象として研究をすすめる。さらに、これらの摘出標本には、比較的高率に異所性子宮内膜が存在していることを確認できたことから、今後この異所性内膜組織のメトホルミン反応性も評価対象に加えることで、解析対照数を増加させ研究を加速させることができるものと思われる。さらに、倫理委員会の承認を得て関連施設での検体採取も行う。
実験に必要な試薬等は教室内のものを利用するなどしたため最終年度では、着床シグナルの解析を実施する。初年度に採取した標本を用い、形態学的観察と機能的評価(アレイ解析、Westernブロット)を実施する
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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