研究課題
挑戦的萌芽研究
卵巣ステロイドホルモンが子宮に胚受容能をもたらし、さらに子宮が着床を誘導する機構の解明を目指して本研究を行った。子宮頸管妊娠は異所性妊娠の中でも発生頻度が低いことから、子宮頸部において着床しにくい機構が存在すると考えられる。マウスでは、着床の場である子宮体部内膜で着床直前に細胞の分化・増殖の状態の劇的な変化(proliferation-differentiation switch, PDS)、すなわち上皮の増殖停止と間質の増殖亢進が認められる。本検討によって、野生型マウスおよびヒトの着床直前の頸部内膜では体部内膜と異なりPDSが認められず、上皮増殖・間質非増殖の状態のままだった。次にプロゲステロン(P)受容体(PR)拮抗剤RU486の野生型マウスへの投与による検討および子宮のP作用が減弱したFKBP52欠損マウス(FKKO)による検討から、P-PRシグナル減弱が体部のPDSを消失させ着床障害を誘導することや頸部の分化・増殖状態には影響しないことがわかった。またFKKOへのP補充によって体部のみでPDSと着床能が回復した。着床直前の野生型マウス子宮において、体部内膜に比べ頸部内膜のPR発現低下、P応答遺伝子の発現低下、エストロゲン応答遺伝子の発現増加が認められ、頸部内膜におけるP-PRシグナル減弱が示された。着床直前の体部内膜に見られるPDSはP-PRシグナルで調節され、子宮の胚受容能の指標になりうる可能性が示された。一方頸部では、PR発現の相対的な低下によりP-PRシグナルが減弱してPDSが起こらず、結果として胚受容能が得られず着床が起こらないことが示唆された。さらに、子宮内膜上皮のmicroRNA(miR-200a)低下によってPR発現増加とP代謝酵素(20α-HSD)発現減少が誘導され、P-PRシグナル活性化を介して子宮に着床能が付与されることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
研究成果は順調に得られており、既にプロジェクトに関連した論文を複数発表することができた。これらの成果をもとに、今後の発展がさらに期待できる。
研究は順調に進展し成果が得られているが、平成25年度には研究に必要な十分数のFKBP52欠損マウスが得られなかった。当該マウスを得るための交配期間を延長し、それに伴い研究期間を平成26年度に延長した。当該マウスを用いた検討を平成26年度に行う予定である。
FKBP52欠損マウスの交配において、出産数が少ないことに加えて母獣による食殺や新生児死亡が重なり、必要な成体数を得るためにFKBP52欠損マウスの交配継続が必要となった。交配期間の延長により、FKBP52欠損マウス子宮を用いた解析が遅延したため、次年度使用の研究費が必要となった。FKBP52欠損マウス子宮を用いた解析のため、FKBP52欠損マウスから抽出したmRNA解析、子宮内膜細胞の培養、着床関連の遺伝子発現解析にかかる試薬および消耗品の購入に充てる。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)
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