研究課題
卵巣黄体化に伴い黄体ホルモン(プロゲステロン; P)に暴露されることで、子宮内膜は適切な細胞増殖・分化の状態を獲得する。マウスでは、着床の場である子宮体部内膜で着床直前に細胞の分化・増殖の状態の劇的な変化(proliferation-differentiation switch, PDS)、すなわち上皮の増殖停止と間質の増殖亢進が認められる。これらの変化は子宮内膜の胚受容能獲得の必要条件である。卵巣ステロイドホルモンが子宮に胚受容能をもたらし、さらに子宮が着床を誘導する機構の解明を目指して、マウスモデルを用いて本研究を行った。着床の場である子宮体部と着床しない子宮頸部の比較による研究の結果、microRNA-200a低下によってP受容体PR発現増加とP代謝酵素20a-HSD発現減少が子宮内膜上皮に誘導され、Pシグナル活性化を介して子宮内膜上皮の増殖停止が起こり、子宮が着床能獲得することが明らかとなった。本研究により、子宮内膜上皮のエピジェネティックな調節によるP受容体(PR)シグナルの調節機構の存在を見出すことができた。また胚受容能の獲得の過程において、子宮頸部および体部の上皮における遺伝子変化をみるため、着床直前の野生型マウス子宮(妊娠4日目の朝および夜)を用いてレーザーマイクロダイセクションによる上皮組織の分離を行い、着床の過程で子宮体部管腔上皮に誘導される遺伝子群を抽出することができた。今後の展望として、抽出した遺伝子から機能解析を行い、着床に必須の新規遺伝子を同定する予定である。
Haraguchi H, et al. Mol Endocrinol論文が、Nature Reviews EndocrinologyのResearch Highlightで紹介され、本研究者らの第29回日本生殖免疫学会の発表演題が学会賞および最高得点演題賞を受賞した。若手育成の結果、日本学術振興会特別研究員:DC 2名、RPD1名が採択された。
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