研究課題/領域番号 |
25670697
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
笹岡 利安 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00272906)
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研究分担者 |
和田 努 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 講師 (00419334)
恒枝 宏史 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20332661)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エストロゲン / インスリン抵抗性 / 糖代謝 / 免疫 / T細胞 |
研究実績の概要 |
エストロゲン(E2)は更年期から急激に減少し、これに伴い肥満や糖脂質代謝障害の頻度が高まる。肥満に伴う内臓脂肪組織の慢性炎症が糖脂質代謝異常の病態基盤として重要であり、慢性炎症を抑制する因子として制御性T細胞(Treg)が知られている。E2は脾臓のTregを増加させるが脂肪組織のTregへの影響は不明なことから、雌性において閉経に伴うE2欠乏がTregの脂肪組織分布に与える効果と、これに伴う慢性炎症と糖代謝に及ぼす影響を雄性と比較し検討した。C57BL/6雄性マウスでは、高脂肪食負荷により内臓脂肪組織のTregは減少するのに対し、雌性マウスでは増加した。本変化に一致して、雄性での内臓脂肪量の増加がより顕著であった。その際、内臓脂肪でのF4/80とCD11cによる炎症性マクロファージマーカーと炎症性サイトカインであるTNFalphaの遺伝子発現は、雄性でのみ著明な上昇を認めた。そこで、E2の影響を解明するため、卵巣摘出した後に高脂肪食負荷した雌性マウスの内臓脂肪組織での変化を調べると、雄性での成績と同様に、脂肪組織の肥大化と慢性炎症の所見を認め耐糖能の悪化を呈した。内臓組織のTregがインスリン感受性に関わる機序を解明するため、PPARgammaの発現変化を検討した。内臓脂肪組織のTregにおけるPPARgammaの発現は、雄性では高脂肪食負荷により減少したが、雌性では上昇傾向を認めた。しかし、卵巣摘出した雌性では雄性と同様に低下した。以上より、雌性ではE2を介してTregのPPARgammaの発現を増加させ、内臓脂肪組織への局在とその機能を高めることで、肥満に伴う代謝障害に対して防御的に作用することが示唆された。脂肪組織でのエストロゲンによる免疫能を制御することにより、閉経期での糖脂質代謝異常を効果的に改善する新規治療法の開発に繋がることが期待される。
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