研究実績の概要 |
本科研費の目的は、卵巣癌における薬剤の獲得耐性化そのものが種々のEMT関連分子やmicroRNAの発現抑制を介して腹膜播種を増加させる負のスパイラル現象を解明することである。研究次年度にあたる本年度の研究成果は以下の通りである。1) 昨年度からの継続研究であった動物モデルにおけるmiR-200ba/429の腹膜播種抑制効果の検討であるが、マウス腹膜播種モデルにおけるAD-miR-200ba/429(アデノウイルスベクター)の投与が、顕著に腹膜播種を抑制し生存率の延長に寄与した。本年度はそれらのデータの確証をとり、論文化につなげることができた(Sugiyama K: Mol Cancer Ther 2014)。この結果、改めてmiR-200ファミリーの腹膜中皮への発現が腫瘍-中皮間の微小環境に変化を誘導し、腹膜播種の抑制の治療ターゲットとなり得る可能性が示唆された。2) EMT関連細胞骨格蛋白として我々はFascinに注目している。Fascinはアクチン繊維 (F-actin, actin filament) 結合(binding)及び結束(bundling)蛋白である。以下の知見を得た。a) Fascinは細胞内においては、アクチン構造(filopodia, microspike, invadopodia, lamellipodia, stress fiber)上に局在していた。b) 卵巣癌細胞株におけるFascinの発現解析では、一般的にmesenchymal phenotypeを示す細胞株において高発現していた。c) それらの細胞株(HEおよびES-2)において、Fascinをknock downした結果、細胞浸潤能の低下が観察された。さらにFascin強制発現卵巣癌細胞では、コントロールと比較してgelatin分解能と浸潤能が有意に亢進していた。
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