研究課題/領域番号 |
25670707
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
後藤 優美子 東海大学, 医学部, 助教 (50624574)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / TrkB / BDNF / アイソフォーム |
研究概要 |
本研究の目的は卵巣癌組織型におけるTrkBアイソフォームの発現とそれに伴うシグナル変化が誘導する上皮間葉転換シグナルを解明することである。 初年度の研究計画は、1.卵巣癌特有のTrkB分子構造の解明及び患者DNAの解析によるゲノム突然変異の有無の確認、2.BDNF/TrkBシグナルの変容に関する生化学的解析である。1.1)卵巣癌各組織型におけるTrkB分子の発現の局在を明らかにした。卵巣癌各組織型の手術摘出標本を用いて免疫染色を行ない、細胞外ドメイン、細胞内ドメインともに、良性組織に比べて卵巣癌でTrkB発現が亢進していることを明らかにした。特に、明細胞腺癌の浸潤部においてTrkBが強く発現していた。2)卵巣癌各組織型で発現しているTrkBの分子構造を明らかにした。卵巣癌の手術摘出凍結標本を用いてRNA抽出を行ない、TrkBの細胞外のBDNF結合部位、より細胞膜に近い部位、細胞膜部位、細胞内のチロシンキナーゼ部位、Shc結合タンパク、等の主要な部位を認識するプライマーを設計し、RT-PCRを行なった。明細胞腺癌では、TrkB-Shc、TrkB-T1アイソフォームの発現変化、BDNF結合ドメインの欠如を含む多様なアイソフォームの形成等を多く認めた。また同一検体でcDNA遺伝子配列を次世代シークエンサーにより解析し、遺伝子変異は認めなかった。 2.1)卵巣癌の手術摘出標本を用いたシグナル変容の解析はまだ実施していないが、2)卵巣癌細胞株を用いてBDNF/TrkBシグナルの解析を行なった。卵巣明細胞腺癌の細胞株では、1.2)と同様のTrkB分子アイソフォームの発現変化が観察される事を明らかにした。また細胞株で発現しているタンパク質分子をSDS-PAGE及びWesternblotting法を用いて解析し、TrkB-TK、TrkB-Shc、TrkB-T1のアイソフォーム発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者ゲノムのDNA解析はまだ実施していないが、倫理委員会の承諾は既に得ており、方法も患者組織のcDNA解析で確立しているため、今年度に実施可能である。 患者組織及び細胞株を用いたシグナル変容解析はまだ実施していないが、抗リン酸化チロシン抗体を用いる実験方法は確立しているため、今年度に実施可能である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度実施予定であった、患者ゲノムのDNA解析、患者組織及び細胞株を用いたシグナル変容解析を実施する。シグナル解析では、下流タンパク質のリン酸化の有無を明らかにし、同時にSnail, ZebなどのEMT関連転写因子群の発現とTrkBアイソフォーム発現との関連を解析する。さらに、平成26年度の計画である、3.卵巣癌におけるBDNF/TrkBシグナルの機能解析を行っていく。卵巣癌細胞株およびそのTrkBトランスフェクタントを用いて、BDNFの添加、BDNF阻害剤・TrkB阻害剤の添加、卵巣癌抗癌剤の添加により、細胞増殖や分化・生存についての影響を分析するとともに、EMTとの関連についても解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の余剰金が生じた理由は、上記の未実施である患者ゲノムDNA解析の費用、シグナル変容解析に伴う実験・材料費が発生していないこと、成果論文は完成しているが受理のタイミングにより、別刷り等にかかる費用の発生が26年4月以降となることが挙げられる。 したがって、25年度の予算残額は26年度に上記の実験及び論文別刷り等により使用予定であり、26年度の当初の予算の使用計画は変わらない。
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