研究課題
本研究の目的は卵巣癌組織型におけるTrkBアイソフォームの発現とそれに伴うシグナル変化が誘導する上皮間葉転換シグナルを解明することである。初年度において、卵巣癌の4つの主な組織型においてTrkB分子の細胞外ドメイン、細胞内ドメインともに、良性組織に比べて発現が亢進していることを免疫染色により明らかにした。特に、明細胞腺癌の浸潤部においてTrkBが強く発現していた。また、卵巣癌の各組織型で発現しているTrkBの分子構造について、TrkBの細胞外のBDNF結合部位、より細胞膜に近い部位、細胞膜部位、細胞内のチロシンキナーゼ部位、Shc結合タンパク、等の主要な部位を認識するプライマーを設計し、RT-PCRにより明らかにした。明細胞腺癌では、TrkB-Shc、TrkB-T1アイソフォームの発現が病期の進行とともに相対的に低下し、BDNF結合ドメインの欠如を含む多様なアイソフォームの形成等を多く認めた。またcDNA遺伝子配列を次世代シークエンサーにより解析し、遺伝子変異は認めなかった。最終年度では、卵巣癌細胞株を用いてBDNF/TrkBシグナルの解析を行なった。卵巣明細胞腺癌の細胞株では、上記の卵巣癌組織と同様のTrkB分子アイソフォームの発現変化が観察された。また細胞株で発現しているタンパク質分子をSDS-PAGE及びWesternblotting法を用いて解析し、TrkB-TK、TrkB-Shc、TrkB-T1のアイソフォーム発現を確認した。明細胞腺癌では正常なアイソフォームもいずれも他の組織型に比べて発現量が低下していた。さらに、明細胞腺癌および漿液性腺癌の細胞株にmTOR阻害剤を添加し、抗癌剤添加によるTrkB分子発現量に変化は認めなかった。今後、上皮間葉転換に関連する分子とTrkB分子の関連について卵巣癌組織および卵巣癌細胞株を用いて研究を行う予定である。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件)
BioScience Trends
巻: 8 ページ: 93 100
10.5582/bst.8.93