研究課題/領域番号 |
25670708
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
春日 晃子 日本大学, 医学部, 助手 (30625421)
|
研究分担者 |
山本 樹生 日本大学, 医学部, 教授 (40167721)
山崎 元美 日本大学, 医学部, 研究員 (40376794)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 母体免疫 / インフルエンザ重症化 / ウイルス血症 |
研究概要 |
正常マウスにA型インフルエンザウイルス(A/Udorn/307/72(H3N2))を1X10*6PFU/body経鼻感染させると感染5日後には、約10%の体重減少が認められたのに対して、妊娠14日目のマウスでは約20%の体重減少を認めた。このとき、生まれてきた仔の体重は、感染マウス・非感染マウスで違いは認められなかったが、生後4日目において、感染マウスの仔で発育遅延傾向が認められた。今回用いたウイルス量では、流産および死産は認められなかった。 一方、新型インフルエンザウイルスK4(A/Kyoto/2011(H1N1))を正常マウスに1X10*6PFU/body経鼻感染させると、感染5日後には約30%の体重減少が認められ、感染10日後には死亡した。妊娠14日目のマウスでは、感染5日後には約35%の体重減少が認められ、出産予定日に死亡し、一部の胎児で発育不良が認められた。胎児数は、感染マウス・非感染マウスで違いは認められなかった。以上の結果から、新型インフルエンザウイルスK4(A/Kyoto/2011(H1N1))を1X10*6PFU/body経鼻感染させると致死的であることから、ウイルス量を5X10*4PFU/bodyに変更し、正常マウスに感染させると感染5日後には約20%の体重減少が認められた。妊娠マウスでは、感染5日後には約15%の体重減少が認められた。 新型インフルエンザウイルスK4をX10*4PFU/body感染させた場合、死亡は認められなかったが、体重減少の著しいマウスでは、末梢血中でもウイルスを検出された(qPCR)。さらに、感染妊娠マウスの体重減少の著しいマウスでは、胎児の体重も非感染妊娠マウスの約半分であり、胎児への影響が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、妊娠時のインフルエンザウイルス感染における母体や胎児への影響を軸として、重症化メカニズムの解明を目的としている。 1年目は、まず季節性A型インフルエンザウイルス(A/Udorn/307/72(H3N2))による感染妊娠モデルマウスの確立を行い、さらに母体及び胎児への影響を検討した。また、当初2年目に予定していた、新型インフルエンザウイルスK4(A/Kyoto/2011(H1N1))についても感染妊娠モデルマウスの確立し、母体及び胎児への影響を検討を始めた。 一般的にインフルエンザウイルス感染では、ウイルス血症にはなりにくいと考えられているが、我々は新型インフルエンザウイルス感染モデルにおいて、体重減少の著しいマウス、すなわち重症化したと考えられるマウスでは、肺組織中だけでなく末梢血中でもウイルスを確認した。末梢血中でウイルスを確認できた妊娠マウスにおいても、著しい体重抑制あるいは体重減少が認められ、その胎児は、非感染マウスの胎児と比べて体重が約半分になっており、インフルエンザウイルス感染の重症化が胎児に影響を与えることが示唆された。また、いくつかの感染妊娠マウスにおける子宮所属リンパ節や胎盤においても、インフルエンザウイルスの存在が確認(qPCR)された。 今後予定している母体免疫の変化を検討するために非感染妊娠マウスから胎盤細胞分離法を確立し、どのような細胞で構成されているかをフローサイトメトリーで検討を行った。 以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度の結果を踏まえ、本年度は、妊娠中にインフルエンザウイルスに感染した場合、肺・子宮所属リンパ節および胎盤で細胞の局在、変動およびサイトカインの変動を検討する予定である。すでに、我々は感染した妊娠マウスの何頭かにおいて子宮所属リンパ節や胎盤でウイルスの存在を確認しているが、未妊娠感染マウスでは子宮所属リンパ節でウイルスは確認されなかったを見いだしている。そこで、感染妊娠マウスの子宮所属リンパ節及び胎盤の免疫組織化学染色を行い、ウイルスの局在を検討する予定である。また、感染妊娠マウスの胎盤にどのような細胞が存在しているのかを免疫組織化学線色で検討する。さらに感染妊娠マウスの胎盤細胞を分離し、フローサイトメトリーで胎盤細胞の変動とサイカイン産生能を検討する予定である。 また、1年目の感染実験の結果からウイルス血症を起こすマウスと起こさないマウスの存在が明らかとなった。特に妊娠感染マウスでは、体重の著しい抑制あるいは減少を認めた場合、ウイルス血症を生じており、重症化していると考えられた。重症化に移行したマウスと重症化しなかったマウスの違いを遺伝子レベル・タンパクレベルで網羅的検索を行い、インフルエンザウイルス感染重症化メカニズムの解明に繋げていきたいと考えている。 本研究は、当初の計画以上に進展しており、今後、研究を遂行する上で特に問題は無いと考えられる。
|