研究課題
妊婦ではインフルエンザウイルス感染に対して、重症化や合併症が起きやすいとされている。2009年に発生したパンデミックを引き起こしたインフルエンザウイルスは、海外で妊婦の死亡や合併症の報告がされている。しかし、その詳細なメカニズムについては未だに解明されていない。妊娠中は免疫寛容が誘導され、胎児を排除しないように免疫応答変化が起こっているが、妊娠中のインフルエンザウイルス感染重症化時の免疫応答変化については不明な部分が多い。本研究では、2009年にパンデミックを引き起こしたK4(A/Kyoto/2011(H1N1))を感染させた感染妊娠モデルを確立し、母体と胎児への影響を検討した。さらに、母体肺組織での炎症性サイトカインの関与についても検討を行い、以下の結果を得た。1)高濃度のK4を感染させた場合、非妊娠マウスでは約10日後に、妊娠マウスでは約5日後に全例死亡した。2)K4感染妊娠マウスの一部で血液中にインフルエンザウイルスを検出した。季節性インフルエンザウイルス感染時には、血液中でインフルエンザウイルスを検出することは稀であるが、今回、血液中にインフルエンザウイルスを検出した妊娠感染マウスでは、流早産は認められなかったが、母体の体重増加抑制と胎児の体重減少が認められ、胎児数に違いは無かった。3)非妊娠感染マウスと妊娠感染マウスの肺組織では、Foxp3・IL-1β・IL-10、TGF-β、GATA-3の発現が異なっていた。以上の結果から、K4感染妊娠マウスでは非妊娠マウスよりも重症化しやすいと考えられた。また、妊娠中の免疫応答変化により、非妊娠マウスと妊娠マウスでは、K4感染時の制御性T細胞の誘導や炎症性サイトカインの産生が異なり、妊娠時のインフルエンザウイルスの感染は妊娠を維持するために炎症を抑える制御系が誘導されている可能性が示唆された。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Am J Reprod Immunol
巻: 73 ページ: 285-91
10.1111/aji.12340. Epub 2014 Nov 7.
PLoS One
巻: 9 ページ: e88369
10.1371/journal.pone.0088369. eCollection 2014.
J Obstet Gynaecol Res
巻: 40 ページ: 2095-2103
10.1111/jog.12462. Epub 2014 Aug 11.