研究課題
卵巣癌の早期発見、および治療効果判定に有用なCirculating Tumor Cellsは、癌細胞の転移浸潤過程において、細胞間接着や細胞極性を失い、間葉系細胞に変化し間質内へ浸潤転移する「上皮間葉形態転換(EMT: Epithelial -Mesenchymal Transition)」が起きていると考えられる。過去の報告から、EMTの現象を起こしている細胞は、強い自己複製能と腫瘍形成能を有する癌幹細胞との関連が示唆されている。癌幹細胞は抗癌剤や放射線療法に抵抗を示し、癌再発の原因細胞と考えられていることから、EMT現象を起こした癌幹細胞様細胞の制御が卵巣癌克服の大きな一歩となりえる。よって、卵巣癌のEMT細胞、癌幹細胞の表現マーカーの同定とその裏付けを分子細胞学的に検討した。膵癌や肺癌で癌幹細胞マーカーの可能性が示唆されている膜蛋白CD24に着目し、EMTとの関連を検討し、さらには卵巣癌治療の分子標的となりうるか検討した。卵巣癌においてCD24強発現は癌のEMT化と関連しており予後不良因子であり、in vitro検討ではCD24は卵巣癌細胞の浸潤能亢進、cisplatin耐性化に重要な役割を担っていることが判明したため、CD24をmolecular targetとすることにより、癌早期発見マーカーとしてだけではなく、浸潤・転移制御や抗癌剤耐性化制御ができる可能性があると考えた。そこで、CD24特異的抗体を外郭に搭載したシスプラチン内包ミセル(CDDP-CD24-LIPO)を開発し、基礎的検討をおこなった。抗癌剤耐性卵巣癌細胞株CaOV3をヌードマウスへ移植し、腹膜播種モデルマウスを作成した。CDDP-CD24-LIPOの治療効果はマウスの生存曲線で、薬物の臓器移行の特異性や安全性はCDDP残留濃度の定量化で検討した。CDDP-CD24-LIPOはCDDPと比べ難治性卵巣癌の播種病巣における組織移行性が高く、優れた治療効果を認めた。CDDP-CD24-LIPOを用いた新たな卵巣癌分子標的療法が期待されることが分かった。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
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