研究実績の概要 |
現行の人工内耳は蝸牛神経を一様に電気刺激するため、蝸牛神経の持つ入出力特性の多様性を再現できていない。本研究では光遺伝学(オプトジェネティクス)を活用して蝸牛神経に光感受性タンパク質を遺伝子導入し、個々の細胞レベルでのタンパク質発現量の違いを利用することにより蝸牛神経応答の多様性の獲得を目指す。そして、生理的な蝸牛神経応答を再現し得る光学人工内耳の開発の可能性を検証する。具体的には、光感受性タンパク質であるチャネルロドプシン2をげっ歯類蝸牛神経に遺伝子導入し、青色光により光誘発性応答を引き起こす。そしてパッチクランプ法にて光誘発性応答の多様性を検証する。
平成27年度の研究成果を以下に記す。1.チャネルロドプシン2遺伝子改変動物よりコルチ器を摘出して蝸牛神経を対象に青色光刺激を行ったが、有意な応答を得られなかった。2.平成26年度に野生型マウス蝸牛神経から記録される応答(興奮性シナプス後電流の振幅)の多様性に関する原著論文を発表したが(Chapochnikov, Takago et al. Neuron 83:1389-1403, 2014)、共同研究先であるドイツ・ゲッティンゲン大学耳鼻科より輸入した難聴マウス(otoferlin遺伝子改変マウス)を対象に実験を行ったところ、難聴遺伝子otoferlinのコードする遺伝子産物が蝸牛神経応答の多様性の形成に関与することが明らかになった。
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