研究実績の概要 |
前年度は反回神経過誤再生の治療の足場となるPGAコラーゲンチューブ(ナーブリッジ)の単独使用による治療効果に関して、直接神経縫合した群と比較検討を行い、PGAコラーゲンチューブ単独使用による有髄神経の再生本数および喉頭筋萎縮予防効果を確認し、報告した。(Suzuki H, Araki K, Matsui T, Tomifuji M, Yamashita T, Kobayashi Y, Shiotani A. Value of a novel PGA-collagen tube on recurrent laryngeal nerve regeneration in a rat model. Laryngoscope. 2015 Nov 3. [Epub ahead of print]) 神経再生がPGAコラーゲンチューブ(ナーブリッジ)を用いることで改善しているにも関わらず、機能改善が起こらない原因は、反回神経の過誤再生が起こっているものと思われ、特に運動神経と感覚、自律神経との過誤再生が起こることが、運動機能が改善しない一因と考えられる。 そこでこの仮説を証明し、それを克服するため、PGAコラーゲンチューブを足場として感覚、自律神経の再生阻害をすると考えられるTrkA blocker を投与し、チューブ単独使用群と比較し検討した。その結果、チューブ単独群と比較して、麻痺側声帯の運動、反回神経の再生本数および神経線維径の改善を認めた。電気生理学的にも伝導速度は両群で有意な差は認めなかったが、麻痺側喉頭筋の活動電位の振幅や呼吸性同期筋電図の同期の改善を認めた。今後はこの結果を報告するとともに、効果のメカニズムについて作用部位や時間などを評価していく予定である。また、この研究は平成28年度の基盤C反回神経過誤再生に対する新しい治療法の開発(16K11252)において研究を継続していく予定である。
|