研究課題/領域番号 |
25670734
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
宮崎 大 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (30346358)
|
研究分担者 |
井上 幸次 鳥取大学, 医学部, 教授 (10213183)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 角膜内皮 |
研究実績の概要 |
ヒト角膜内皮の免疫調節機能を検討するため、角膜内皮細胞にヒトサイトメガロウイルス(CMV)を感染させ獲得免疫系を賦活化できるかを検討した。このため、CMV感染既往のある健常者およびCMV内皮炎あるいは虹彩炎の患者より同意取得後、末梢血よりリンパ球を採取し、感染角膜内皮に対する応答性を検討した。まず、一般的なウイルス抗原特異的な細胞障害活性はCD8+Tリンパ球にmediate されているためCMV感染内皮細胞がCMV感染既往CD8+T細胞を刺激できるか検討した。その結果、CMV特異的に反応するCD8 +T細胞株を取得することができ、これらが実際に病態に寄与しえる可能性が示唆された。次に、この細胞株が実際に角膜内皮を障害しえるかについて検討を行った。CMVのIE1およびpp65などの主要エピトープを角膜内皮が提示できるか検討した結果、CD8+は抗原特異的にインターフェロンγを産生し、さらにグランザイム活性を誘導したことからCMV感染内皮はメモリーCD8+T細胞のCTL活性を誘導しえることが示唆された。 臨床的には、CMV内皮炎・虹彩炎に対する診断は、real-time PCR法により行われており、先進医療にも認定されている。つまり、その検査結果の標準化は統一した診断基準の策定のため必須と考えられる。そこで現在、本邦においてCMV real time PCRを用いて臨床診断をおこなっている代表的な5施設の協力のもとCMV定量の標準化を行いCMV定量の感度、特異度の算出、さらに国際単位による定量の標準化をおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト角膜内皮細胞へのCMV感染は一般には困難であり臨床分離株によるproductiveなウイルス産生はおこりにくくアッセイ系の構築は困難である。現在、角膜内皮においても十分に増殖できるCMV株を用いてアッセイ系の至適化を行ってきた。さらに、CMV内皮炎や虹彩炎の罹患率は高くないのみならず、HLA適合ドナーを検索する必要があったが、ドナー数も集積しつつある。特にドナー数の増加にともないCD8細胞株のストックを集積しつつある。これらは、角膜内皮の免疫調節能のターゲットの詳細を解析可能な貴重なツールとなると考えられる。 免疫系を標的とした角膜内皮炎の新規治療法を考える場合、反応性エピトープの探索が不可欠であり、これによりワクチン開発へとつなげることができる。これまでの解析により少なくとも反応するエピトープがいくつか同定できており、さらに探索を広げる必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでのところCMVが角膜内皮に感染しえること、さらに感染ウイルスのタンパクがメモリーCD8+T細胞の活性化を通じて獲得免疫系を賦活化しえることが判明してきた。このように角膜内皮細胞がunconventionalな抗原提示細胞として機能する場合、免疫賦活化のみならず調節機能を賦与する可能性も検討する必要がある。さらには、ワクチンを念頭においた治療法の提案が妥当性をもつかに関しても検証を進める必要がある。このためには、詳細なエピトープマッピングにくわえ、賦活化されるリンパ球機能の決定は不可欠であり、現在これらに注力している。おそらく同様の機能が線維柱帯細胞にもあることが想定されるが、現在のところ内皮細胞のアッセイ系の詳細な解析をまずおこなう必要があると考えている。線維柱帯細胞を用いた解析は、内皮細胞系の詳細な解析結果を礎にしての検討を予定しており、現在の解析と平行した次年度の課題と考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品について予定よりも安価に購入できたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
持ち越しは少額であり、当初の予定どおりを計画している。
|