研究課題
ウイルス感染においては、感染細胞はホストの抗ウイルス反応を抑制する機構を備えていることが知られている。そこで、角膜内皮細胞がどのように自己をウイルス感染から防御するかを検討した。まず、過去の感染の既往がない状態で、感染内皮細胞が、単独でヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を駆逐する機構を備えているかを検討した。HCMV感染後の角膜内皮の感染応答をみた場合、自然免疫系としてI型インターフェロンを介した抗ウイルス応答は通常どおり発動された。しかしながらI型インターフェロンのシグナル経路の阻害は顕著なウイルス力価の抑制を誘導できなかった。一方、I型インターフェロンは、免疫記憶を介して獲得免疫系を増強するための必須のサイトカインであり、角膜内皮の防御は、主として獲得免疫系の増強に頼っていることが推定された。そこで、感染局所でおこりえる獲得免疫系の反応として、感染角膜内皮が角膜内皮炎患者の細胞障害性Tリンパ球を活性化できるかを検討したところ、内皮炎患者においてはそのプライミング機構がIE1優位に阻害されていた。次に、ウイルス感染を始めとして炎症性眼圧上昇の機序を探るため、解放隅角緑内障、新生血管緑内障の患者の前房水のプロテオーム解析を行った結果、前房内のIL-15、MCP-1上昇が病態に寄与する可能性が示唆された。MCP-1は、単純ヘルペスウイルスやHCMV感染後、角膜内皮によっても多量に分泌される。このため、inflammatory ocular hypertension syndromeとしての病態のメディエータである可能性を考慮し、線維柱帯細胞のMCP-1反応性トランスクリプトームを検証した。その結果、インテグリンを始めとする細胞骨格制御への寄与が示唆され、病態への寄与を探るため、さらなる検証を進めつつある。
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Br J Ophthalmol
巻: NA ページ: NA
10.1136/bjophthalmol-2015-308238
巻: 99 ページ: 1435-42
10.1136/bjophthalmol-2015-306863