代表的な緑内障手術であるトラベクレクトミーにおいて、手術効果消失に至る主要な原因は、結膜下の炎症反応・瘢痕化によるバイパス路の閉塞であるため、結膜下組織において炎症反応を直接観察することが重要と考えられる。これまでのイメージング技術では、生体での動的な炎症反応を捉えるのは技術的に困難であったが、本研究では近年確立された2光子励起顕微鏡を用いた4次元イメージングを、生体のままの結膜組織で非侵襲的に捉える観察システムを構築した。Lysosome M-eGFPトランスジェニックマウスを利用することで好中球を蛍光ラベルして、コントロールとなる正常結膜眼(非手術眼)のほか、10-0ナイロンで結膜縫合を行ったマウス手術モデルを作製して両者の比較検討を企画し、炎症細胞数の計測に加え、動画解析ソフトを用いることで炎症細胞のダイナミクス(遊走移動量)を定量的、かつ経時的に解析することが可能であった。その結果、急性期の結膜においては6時間後には炎症細胞数の有意な増加と活発な活動性が認められ、早期に炎症反応のプラトーに達していた。 この4次元イメージング技術を応用することで、緑内障手術術後の炎症病態の詳細な把握、あるいは薬剤による炎症修飾反応など、生体内での炎症環境の理解をさらに深めることが可能と考えられ、術後炎症管理の発展と緑内障手術の臨床成績のさらなる向上とに寄与する研究成果である。
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