研究課題/領域番号 |
25670736
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
戸田 宗豊 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30550727)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 角膜内皮細胞 / 相転移 / エネルギー代謝 / 細胞表面マーカー |
研究概要 |
①網羅的アレイ、クラスター解析により、培養角膜内皮細胞において細胞老化、線維化、上皮間葉移行などの相転移の有無で10~15個の細胞表面抗原に著明な差異が見られることから、このうちの複数種の細胞表面マーカーを指標として培養条件下で相転移を起こした細胞と起こさなかった細胞をフローサイトメーターにより定量化をする系を確立した。 この系を用いて、継代回数、ドナー年齢間で細胞表面抗原プロファイルを比較した。その結果、継代を経るごとに相転移を起こした細胞が増加していくことが明らかとなった。また、ドナー年齢間でも差異が認められた。さらに、相転移を起こしている細胞には、複数の亜集団が検出され、本法は単に相転移の有無を区別するだけでなく、細胞老化、線維化、上皮間葉移行などの相転移の種類も区別できる可能性がある。各亜集団がどのような相転移を起こした亜集団なのかの識別は、現在解析中である。以上のように、相転移の有無を定量的に比較する系を確立できたことから、次年度以降は、この系を用いて新鮮角膜内皮細胞(成人由来、高齢者、Gutatta病変を有する患者由来)の細胞表面抗原を比較することに加え、遺伝子発現プロファイルを比較することで、角膜内皮細胞の相転移制御の分子機序を明らかにする。 ②培養角膜内皮細胞には、増殖特性の異なる亜集団が存在すること、エネルギー代謝の異なる少なくとも2つの亜集団が存在することを応募時に確認している。これらの知見をもとに、Glu欠損乳酸添加培地で細胞亜集団間の代謝要求性の違いにもとづく選別を試みたところ、相転移を起こした特定の亜集団を選択的に除去することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が独自に選択した相転移関連細胞表面マーカーを指標としたFACS解析により、従来行っていた顕微鏡観察下での相転移の判別よりも高感度かつ定量的に相転移の有無を定量化することが可能となった。その結果、現在行っている培養条件下では角膜内皮細胞は実際には高頻度に相転移を起こしていること、複数の相転移亜集団が存在することが明らかとなった。本アッセイ系を使用して培養条件を検討した結果、いくつかの改良を加えることで相転移をある程度抑制すること、すなわち、本研究課題の目的の1つである「相転移制御技術の創出」が可能となりつつある。ただし、現段階では相転移制御に係わる標的分子および機構は未解明のままである。この点については、次年度以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果により、相転移を起こしていない細胞および相転移亜集団の区別が可能となり、培養角膜内皮細胞各亜集団を純化するためのFACSソーティングやMACSを行う際のターゲット分子の候補が得られた。加えて、今年度に代謝要求性の違いにもとづく選別法も確立できたことから、これらを駆使して早急に培養角膜内皮細胞各亜集団を純化する系を確立する。得られた馴化亜集団の細胞表面抗原・遺伝子・miRNA発現特性を網羅的に検索、比較するとともに新生児期・幼児期vs高齢vs内皮機能障害ドナー由来角膜内皮細胞についても比較検討し、相転移制御に係わる標的分子候補を選択する。選択した標的遺伝子プロファイルから成人と新生児期・幼児期由来角膜内皮細胞間のgene signatureの乖離を明らかにして相転移制御破綻機序を推定し、相転移制御技術の創出につなげる。また、3Dマトリックス培養法でSphere培養法にも26年度は取り組みを開始しており、角膜内皮辺縁部に存在するとされる幹細胞の表現型質の解明にも力を注ぐ予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね研究計画通りに進展しているものの、本年度実施予定であった研究内容のうちの一部が実施できていない。逆に、経費をあまり消耗しない培養における角膜内皮亜集団の存在という世界的に初めての発見の確認実験を繰り返したものである。したがって、研究経費のうち相対的に比重の多い網羅的解析のためのチップや委託解析が繰り越されたため、次年度繰越額が生じたもので研究の質の変換による繰越額の発生である。むしろ研究の進展によるものと言える。 研究計画内容に関しては現在のところ大きな変更点はなく、着実に実施できているものと考える。そのため、基本的には研究計画調書に記載の内容に従い、研究を実施していく予定であるが、網羅的解析など解析に時間を要する項目を優先的に行い、委託解析などを活用するとともに研究の律速段階を見極め研究の効率化を行う。
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