研究実績の概要 |
本年度はアトピー網膜剥離の病態におけるアラーミンの役割の検証を動物モデルを用いた実験を主にして遂行した。具体的にはアトピー病態に関連するアラーミン分子の制御がアトピー網膜剥離の治療に有用か否かを検討するため、網膜剥離マウスモデルおけるアラーミン分子(IL-33)の役割をIL-33ノックアウトマウスを用いて検討した。網膜剥離モデルはマウス眼球に30G針を用いた穿孔創を作成することで樹立した。網膜剥離モデルでは通常ミュラー細胞の核に見られるIL-33の染色性が消失しており、外傷に伴いIL-33が網膜組織内あるいはその周囲に拡散・放出したことが示唆された。また網膜組織を凍結・融解することによってネクローシスを誘導するモデルを作成し、器官培養したところ、培養上清中にIL-33タンパクが放出されることをELISA法で確認した。網膜剥離モデルでは網膜組織の瘢痕化に関連する遺伝子群(tgfb1, alpha-sma, timp1, col1a1)の有意な発現上昇がwild-typeマウス(対照マウス)では確認されたが、アラーミンIL-33を欠く、IL-33ノックアウトマウスを用いたモデルでは有意な発現上昇を認めなかった。確認実験として、IL-33ノックアウトマウスを用いた外傷作成時にリコンビナントIL-33を500ngを注射針の先から補充投与すると、wild-typeマウスと同様の組織瘢痕化関連遺伝子の有意な発現上昇がみとめられた。以上のことから、網膜剥離モデルにおけるアトピー関連アラーミンIL-33が組織瘢痕化を増長させていることが示唆された。この内容は学会発表をへて、論文投稿を予定している。
|