最終年度においては、滲出型加齢黄斑変性(AMD)における現在の標準治療の一つである抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬投与後の脈絡膜厚変化と視機能および解剖学的変化の関連につき、特に滲出型AMDの二大サブタイプである典型AMDおよびポリープ状脈絡膜血管症(PCV)での差異に着目して検討した。代表的な抗VEGF薬であるアフリベルセプト硝子体内注射(IAI)開始12ヵ月後には中心窩下脈絡膜厚は有意に減少したが、その減少幅と視力改善はPCVにおいて有意に関連があった一方、典型AMDでは両者に有意な関連はみられなかった。典型AMD、PCVの双方において、12ヵ月間の疾患活動性再発がなかった群が再発があった群に対して有意に中心窩下脈絡膜厚が減少していることを報告した。すなわち、IAI後にみられる脈絡膜厚減少は網膜機能および疾患活動性と関連があることを明確にした。 また典型AMD、PCVにおける脈絡膜層構造の差異につき検討した。典型AMD、PCVでは中心窩下脈絡膜厚、脈絡膜管腔・間質比に有意な差はみられなかったが、PCVでは典型AMDと比較して脈絡膜毛細管板層ー脈絡膜中血管層厚が菲薄化していることが明らかとなった。 すなわち、典型AMDとPCVは脈絡膜新生血管の形態のみならず、その背後に存在する脈絡膜構造にも差異があることが明らかとなった。今後はOCTアンジオグラフィやレーザースペックルフローグラフィといった他の非侵襲的診断機器も用いた多角的解析を行いたいと考えている。
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