研究実績の概要 |
感覚の90%を占める重要な機能である視覚におけるセンサーである網膜は、1度損傷を受けると回復は困難であるため、失われた視覚の再生を目指して網膜の再生研究が行われている。我々は、ヒト体細胞(虹彩細胞と皮膚線維芽細胞)からダイレクト・リプログラミングによって網膜視細胞様の細胞を作製することにすでに成功している(Seko Y et al. PLoS One,2012、Seko Y et al. Genes Cells, 2014)。本研究は、ダイレクト・リプログラミングによる網膜視細胞作製を完成させ、応用範囲を広げることを目指している。 平成27年度には、①細胞ソースをヒト眼球由来虹彩細胞やヒト皮膚線維芽細胞からヒト末梢血単核細胞へと広げ、誘導方法の改善を目指し、②in vivoに近い条件で培養するため、ラット網膜色素上皮細胞との共培養を試み、③3種類の転写因子を本来の発生過程に近い時系列で導入するために、レトロウィルスベクターと細胞質型RNAウィルスベクターを併用し導入した。現時点で、ヒト末梢血単核細胞から分化誘導した視細胞様細胞にロドプシンなど視細胞特異的遺伝子の発現と光応答が確認された(研究業績参照)。 今後は、長期誘導・最終分化を可能にするためには導入するベクターの改良が必要である。
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