研究課題/領域番号 |
25670745
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山本 有平 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70271674)
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研究分担者 |
古川 洋志 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00399924)
林 利彦 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00432146)
舟山 恵美 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10533630)
小山 明彦 北海道大学, 大学病院, 講師 (70374486)
村尾 尚規 北海道大学, 大学病院, 助教 (90706558)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ケロイド / 免疫抑制剤 |
研究概要 |
初年度の計画に従い、最初にサンプル収集を実施した。ケロイド患者よりケロイド組織と末梢血を採取した。ケロイド組織よりケロイド線維芽細胞を初代培養し,細胞株の樹立と凍結保存を行った。また、末梢血より濃度勾配を用いて単核球を分離し凍結保存した。同様にコントロールとして非ケロイド患者より皮膚、末梢血を採取し、線維芽細胞や単核球を培養、分離した後、凍結保存した。 次に、免疫抑制剤であるrapamycinのケロイド線維芽細胞やCD4陽性T細胞に対する効果を確認する方針とした。採取したケロイド組織に対して免疫組織学的染色を行い、rapamycinの標的タンパクであるmammalian target of rapamycin(mTOR)およびリン酸化し活性化したmTOR(p-mTOR)がケロイド組織内に存在することを確認した。 ケロイド患者及び非ケロイド患者の単核球から磁気細胞分離法によりCD4陽性T細胞を分離した。分離したCD4陽性T細胞を抗CD4抗体、抗CD25抗体、抗FOXP3抗体で染色しフローサイトメーターで解析した。現時点で解析数は少ないが、ケロイド患者及び非ケロイド患者間でCD4陽性T細胞中の制御性T細胞(CD25強陽性、FOXP3陽性細胞)の比率に差はなかった。CD4陽性T細胞を抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗IL-2で活性化した群と抗CD3抗体、抗CD28抗体、rapamycinで刺激した群とを同様に解析し比較した。rapamycinで刺激した群ではCD4陽性T細胞中の制御性T細胞の比率が増加していたが、ケロイド患者及び非ケロイド患者間で現時点で増加率に明らかな差はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標としてサンプルを収集し、免疫抑制剤のケロイド線維芽細胞やCD4陽性T細胞に対する抑制効果のポテンシャルを確認する必要があった。免疫抑制剤であるrapamycinの標的タンパクであるmTORおよびmTORの活性化(p-mTOR)をケロイド組織内に確認することができた。これによって収集したサンプルにおいて、rapamycinがケロイド線維芽細胞に何らかの作用を及ぼす可能性を示すことができた。また、免疫抑制剤のCD4陽性T細胞に対する抑制効果の指標として、免疫反応を抑制する作用を持つCD4陽性T細胞である制御性T細胞を設定した。CD4陽性T細胞をrapamycinで刺激し制御性T細胞(CD25強陽性、FOXP3陽性細胞)の誘導を確認しているが、マウスと違いヒトではFOXP3陽性細胞が必ずしも制御性T細胞と一致しないことがある。今回我々は抗CD127抗体を用いた染色も同時に行った。制御性T細胞とCD127陽性率は負の相関をみせるが、我々のプロトコール、サンプルでもFOXP3陽性細胞の85~95%がCD127陰性であり、研究計画、プロトコールが妥当であることとrapamycinの確実な免疫抑制性を示すことができた。 以上のことから、研究の前提となるサンプルやプロトコールの妥当性、rapamycinのケロイド線維芽細胞やCD4陽性T細胞に対する抑制効果のポテンシャルが確認されたと判断し、初年度の達成度としてはおおむね順調に進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はrapamycinの他に、代表的な免疫抑制剤の一つであるtacrolimusについてもケロイド線維芽細胞やCD4陽性T細胞に対する抑制効果を確認する。rapamycin同様に、tacrolimusにてCD4陽性T細胞を刺激し、制御性T細胞の誘導性を確認する。ケロイド線維芽細胞をrapamycin、tacrolimusで刺激し、細胞増殖抑制効果、コラーゲン産生抑制効果、TGF-β産生抑制効果などをMTS assay、ウェスタンブロット、ELISA、real time PCRなどで検証する。さらに、ケロイド線維芽細胞ーCD4陽性T細胞共培養モデルを用い、両者の相互作用が生じている、より生体に近い条件下でrapamycin、tacrolimusによるケロイド線維芽細胞、CD4陽性T細胞刺激を行い、細胞増殖抑制効果、コラーゲン産生抑制効果、TGF-β産生抑制効果、制御性T細胞の誘導性を前述の方法で検証する。それぞれの実験はコントロールとして非ケロイド患者由来の皮膚線維芽細胞、CD4陽性T細胞についても実施し、ケロイド群と比較する。また、初年度に引き続きサンプルの収集や免疫組織学的染色、末梢血CD4リンパ球の解析などを継続実施し、解析数を増やす方針である。薬剤による効果の差異、ケロイド患者ー非ケロイド患者間での薬剤感受性の差異も検討する。 得られた結果については統計学的解析を行った後、関連学会にて発表し、論文の作成、投稿などを行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究はおおむね順調に進展し、予算と支出にほぼ差は生じなかったが、41981円の次年度使用額が発生した。抗体、試薬等の購入を予定していたが、いずれも50000円程度であったため、次年度使用額が発生した。 細胞培養ための培地、生化学試薬、Real-time PCRの試薬、各種抗体、その他のシャーレ、ピペット等の実験機材の各種物品等の購入に充てる予定である。
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